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ワークショップD活動報告・第5弾(富士市出張編)

ワークショップD活動報告・第5弾(富士市出張編)

 コロナ第六波が迫り来る中でしたが、1月14日に、ワークショップDは、静岡県富士市での調査を実施しました。富士市は、2016年に「富士市事前都市復興計画」を策定し、事前復興について先駆的に取り組んでいる自治体です。最終報告会の準備過程において、さらに詳しく学ぶ必要性を痛感した私たちは、年明けすぐにヒアリング協力をお願いしました。突然の依頼にもかかわらず、ご快諾くださった富士市役所都市計画課の皆様のおかげで、貴重なお話をうかがってきました。

 もちろん、感染防止対策はいつも以上に気をつけます。教員1名、学生1名という最少人数にしぼり、移動中の車内でもつねに換気を心がけ、ランチはもちろん黙食。農林水産省のGI(地理的表示)に登録されている「田子の浦しらす」の丼は、前年の追加登録よろしく 、「釜揚げしらす」と「生しらす」のハーフ&ハーフ型でした。




 富士市役所でのヒアリングでは、「富士市事前都市復興計画」の策定後における他の自治体等からの視察状況や、庁内での部局間連携体制、地区住民や事業者との連携など、さまざまな観点から、直接ご教示いただくことができました。ウェブサイトの公表資料だけではわからない最先端の現場のお話をうかがえるのが、やはり公共政策ワークショップの醍醐味です。





 ヒアリングの前後には、まちの視察もふんだんに行いました。富士市の駿河湾沿いには、高さ17メートルの防潮堤が、10キロ以上に及んで建設されています。これは、1966年の台風26号の襲来時に、当時の13メートルの海岸堤防を高潮が乗り越えてしまい、多くの犠牲や被害が生じたことを受けて、「日本一」の高さに整備されたためです。今日の高い防災意識は、過去の教訓の上に成り立っていることを、あらためて考えさせられました。




 また、「富士市事前都市復興計画」で想定される被害は、津波の浸水だけにとどまりません。JR東海や岳南電車の路線が集中する吉原地区では、建物の倒壊や大規模な火災、狭隘道路の閉塞などが予想され、それを踏まえた地域単位での復興まちづくり訓練が行われています。その街なみを直接見て歩くことで、地域が主体的に進める事前復興のあり方を、より具体的にイメージできるようになりました。




 ところで、富士市といえば、やっぱりプチャーチン。「えっ、誰ですか?」という反応だった同行学生の協力を得て、市内に点在する史跡を、視察途中に手際よく見て回れました。





 幕末期に、アメリカのペリー提督と和親条約締結を競い合ったロシアのエフィーム・プチャーチン提督を乗せたディアナ号は、1854年12月、南海トラフ沖での安政東海地震による津波で大破し、その後、今の富士市内で沈没しています。時を経て、1976年に引き上げられた錨や、プチャーチンらを救出した漁夫の像、そして3分の1の大きさで再現されたディアナ号が、富士市の各地に展示されています。

 170年前のことは、通常ならあまり参照されにくい事例でしょう。しかし、高い確率で起こりうる巨大地震については、たえず教訓を次世代に伝えていく必要があります。高台の公園内に復元されたディアナ号の姿は、穏やかな太平洋の来たるべき急変に備えて、じっと見守り続けているようにも感じられました。





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