東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.8
(2004年5月31日配信)

本日(5/31)に、以下の事項につき、ホームページを更新しましたので、御連絡します。
http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/
1) 2005年4月入学志願者用の
  入試関係日程・場所、
  入学試験(第一次)の科目・出願範囲
について掲載しました。
2) 説明会の開催予定について掲載しました。
3) 入試関係Q&A、FAQを一部修正しました。
4) カリキュラムにシラバスのページを追加しました。

今号から、授業に関するエッセイを2つお送りします。

まず、ワークショップ担当教員の三好信好教授から

WE SHALL OVERCOME

三好信好教授より

「公共政策ワークショップT」という新しい試みがいよいよスタートしました。今年はワークショップを4つ開設することができたため、いずれも8名以内という極めて少人数の授業が可能となりました。私自身、ワークショップのような形態の授業を行うことはもちろん初めてですので、その運営は試行錯誤の連続であり、どのような進め方をするかを含めて学生諸氏に考えてもらおうとしています。思えば、そもそも政策を立案するということ自体が、あらかじめ答えの無い試行錯誤の過程のようで、その訓練として絶好の形態であると言えるのかもしれません。

私が指導するワークショップでは、これまでに、地方公共団体やNGOの第一線で活躍されている方からのヒアリングなども行わせていただきました。その際、当面の政策課題を離れて、なぜ公務員(又はNGO)を選択したのか、さらに現時点でそのことをどう自己評価しているかなど普段お聞きすることのできない立ち入った話もうかがったりしています。もちろん実社会のことですから、それぞれ紆余曲折を経てきておられるのですが、皆さん後進のために率直なお答えをいただけているという印象を持ちます。一言で言えば初心を大切にしているという感を深くしました。そして私は、やや場違いですが、有名なDeep in my heart,I do believe,we shall overcome some dayという言葉を思い出したのでした。そしておのずと連想は、I have a dream という、これも極めて有名な演説に及びました。(いずれも今20代(であろう)大半の方にとっては馴染みのない言葉ではないかとおそれますが、せっかく公共政策大学院に関心をお持ちいただいたのですから一度全文をチェックしていただければと思います。)

公共政策ワークショップTは、その過程で、実社会の様々な利害関係者に直接お目にかかって調査やヒアリングをするということがひとつの大きな要素になります。そしてそのことが、ワークショップの主目的である政策立案の疑似体験ということにとどまらず、学生諸氏が自らの人生を考えていく上での大きな糧となることを期待しています。

続いて、政策調査の技法を分担している牧原助教授から連載でお送りします。

「政策調査の技法――インタビューの技法」の授業を終えて

牧原出助教授より

東北大学公共政策大学院では、入門的な授業科目に「政策調査の技法」を設けています。これは、インタビュー技法、海外事情調査、統計分析、政策調査のそれぞれについて、解説と実習を行うもので、コア・カリキュラムや公共政策ワークショップでの履修の導入になるよう、1年次前期に配置されています。多様なディシプリンからなる公共政策大学院では、入学生は異なる大学や学部の出身であるだろうと予想されていました。そこで、政策調査の基本的なスキルを共有した方がよいであろうという配慮から、このような科目を開講することにしたのです。

とはいっても、政策調査の基本的なスキルとは何か、ということは必ずしも自明ではありません。政策分野によっては、法学であったり経済学であったりするでしょうし、授業科目として体系化できるのかどうか疑問であって、公共政策ワークショップの中で必要に応じて学ばせた方が効果的ではないかという意見もありました。しかし、東北大学公共政策大学院では、官公庁等でのOJTはもはや限界を来しており、その中のある部分は大学院カリキュラムの中で体系的に教授することが可能である、という立場に立っています。そこで、試行的であるにしても、政策調査の基礎となるスキルについては、実際に授業を行いながら、徐々に方法的体系化を図っていった方がよいであろうという結論に達しました。その結果、インタビュー技法を初めとする4分野を柱にして、basic ? advanced ? further の3段階くらいのスキル・アップをある程度イメージしながら、とりあえず初年度はこのうちbasicの部分について授業を行うことにしたのです。これら4分野はどれも、方法の解説だけではなく、実習が不可欠です。実習がどの程度の成果に達するかを見極めながら、より高次の授業を行っていきたい――それが担当教員の願いです。

このトップバッターということで、私は4回にわたってインタビュー技法について授業を行いました。私自身、研究に当たってインタビューを行っており、また公人への聞き書きの記録作成であるオーラル・ヒストリーとして、後藤田正晴元官房長官、鈴木俊一元東京都知事といった方々へのオーラル・ヒストリー・プロジェクトに参加した経験を持っています。そうした様々なインタビュー経験から、インタビューの手順、インタビュー記録の作成、インタビュー記録の解釈などについて授業を行い、学生には自らインタビューを行い、テープ起こしによって記録を作成するという実習課題を与えることにしました。学生には、入学時に『公共政策ワークショップ・ハンドブック』を配布していますが、その中に、インタビューの技法についての章を設けて解説を行っています。これをとりあえずの教科書にしながら、授業を進めていきました。

インタビューは経験を積めば積むほど、成果が上がるものと言っても過言ではありません。このことは、学生が見よう見まねでインタビューを行ってみても、それなりの成果が上がることをも意味します。では、なぜあえてインタビュー方法論についての授業を行うのでしょうか?

一つには、インタビューはインタビュー当日の質問と答えだけを指すのではなく、周到な準備とインタビュイーの選定、さらにはアポイントメントの取り方や、記録の作成など、さまざまな手順から成り立っています。これらについて最低限の問題点を前もって把握しておいた方が、インタビュー当日の質疑に集中することができます。早くからよりよいインタビューを行うことが可能になるのです。

二つめには、自分のインタビュー方法について自覚的であればあるほど、他人が行ったインタビュー記録を自分の目で見極め、いかなるやりとりが行われたのかを、批判的に検討する眼を養うことができるようになります。つまり、インタビュー記録・口述記録の解釈力を養うことができるのです。新聞・雑誌の対談、会議の議事録など公刊されている口述記録には様々な種類があります。授業では、代表的なインタビュー記録をとりあげて、学生に感想を書かせるとともに、記録と学生の感想とを全員が予め読んだ上で、討論を行いました。インタビュー現場を想像しながら、いかなる編集が行われているのかを見極め、語り手の真意を確定していく力を養うことがねらいです。

三つめには、これら多様なインタビュー記録の作成現場についての知見を得ることです。公共政策ワークショップでは、専ら政策調査のために情報収集を行いますが、その他にも新聞報道における取材や、歴史記録の作成としての聞き書きであるオーラル・ヒストリーなど様々なインタビューが行われています。作成現場に早くから親しんでおくと、記録の種類に応じて、読み方を変えることができます。また、自身がインタビューを行う際のヒントを得ることもできるのです。

よって、その道の専門家に授業に来て頂き、私とのコラボレーションで授業を行うことにしたのですが、これは私にとっても、学生にとっても本当にスリリングな体験でした。新聞記者の方を講師にお招きした回では、私による記者会見という設定で、一定の質疑をした後、学生に記者会見をまとめた新聞記事を書いてもらい、その場で論評しあうという授業となりました。記者会見の場で、いかに公式見解を越えた情報を得るか、それをどう短い記事にまとめるか、という実習は、学生にとってきわめて新鮮であったようです。また、日本のオーラル・ヒストリーの第一人者である御厨貴東京大学教授・東北大学客員教授によるオーラル・ヒストリー論では、具体的なオーラル・ヒストリー・プロジェクトでのご経験を交えながら、各省庁の歴史と情報公開への積極性が統治手法と密接に結びついているというお話を頂きました。オーラル・ヒストリーは、米国の公共政策大学院では入門授業において多様に活用されています。授業科目「政策調査の技法」は、日本の公共政策大学院教育の水準を、世界の公共政策大学院教育の水準に近づける重要な一歩であると言えるように思います。

授業の回数を重ねるにつれて感じるのですが、学生の公共政策大学院への熱意がひしひしと伝わってきます。説明が終わるとすぐさま多方向的なディスカッションが始まります。また、学生に小課題を与えると、思いも寄らぬ鋭い指摘をふくんだペーパーが帰ってきます。こちらからより適切なコメントを返せれば、打てば響くように学生の知的な分析能力が伸びるのではないか、今はそのような期待を抱いています。

今後学生の実習課題が提出されます。それらを一つ一つ読みながら、来年に向けてより密度の濃い授業を行いたいと考えています。

<編集後記>

「法律による行政」は、行政を行う際の基本的な原則であろうと思います。(詳しい話をやると、知識の浅さがすぐにばれるので避けますが。。。(苦笑))
通産省に入省して間もない頃にびっくりしたのが、「○○は、何法に根拠があるのか?」とよく先輩や上司に詰められたことです。
外国まで悪名がひびいていたギィーセイシドウ(行政指導)も多々あった時代ですし、とにかく何らか法律上の根拠を見つけ出せば良いという雰囲気もなかったわけではないと思いますが、それでも「法律による行政」というのは、実務においても当然のものと理解されていたように思います。(おかげで、授業でもワークショップでも、すぐ根拠法令に言及せずにいられないのですが。。。)
かたや、法律学だけが行政官の必須の知識ではないし、経済官庁等のみならず多くの中央省庁で、例えば経済学も理解していないと仕事にならないのも事実だろうと思います。
こうやって考えてみると、行政官に求められる基礎知識には大変幅広いものがあると、今になって思います。
実のところ、官庁訪問をしていた21歳の時、何が行政官に求められる知識かはおろか、(法学部出身なのに)「法律による行政」も満足に理解できていなかったのですが。。。
(文責:田口左信)

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