東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.15
(2005年6月13日配信)

■平成18年度(2006年度)公共政策大学院入学試験についてのお知らせ

平成18年度(2006年度)公共政策大学院入学試験の予定が決まりましたので、お知らせいたします。

出願受付期間:平成17年9月5日(月)〜9月9日(金)
第1次選考試験:平成17年9月24日(土)
第1次選考合格者発表:平成17年10月14日(金)
第2次選考試験:平成17年10月29日(土)、10月30日(日)
最終合格者発表:平成17年11月18日(金)

平成18年度(2006年度)入学試験に関しては、今後とも本ニュースレター及びホームページを利用してお知らせしていく予定です。また、平成18年度(2006年度)募集要項は、7月ころ公表する予定です。

■教員エッセイ

今回は、西村篤子教授(前在ベルギー日本大使館公使、外務省より出向)のエッセイをお届けします。

(無題)

西村篤子

仙台も新緑の大変美しい季節となりました。長く厳しい初めての冬をこの地で過ごした者にとっては、山の青葉の輝きが殊の外まぶしく、心が弾む日も少なくありません。この地に来て初めて、同じ「新緑」の中にも、鮮やかな緑から、力強い濃い緑まで、微妙な色調のハーモニーがあることに気づきました。川内の研究室の窓いっぱいに映し出される、夕陽に一段と照り輝く青葉山の新緑の美しさはまるで「一幅の絵」のようで、しばし別世界にいざなわれる心地がします。

さて、現実の公共政策大学院の世界でも、新1年生が新たなスタートを切りました。4月6日の魯迅教室での入学式に引き続き、まだ冬の寒さの残る川渡のセミナーハウスでのオリエンテーション合宿も無事に済み、これから1年かけて一つの政策課題にグループで取り組む4つのワークショップも立ち上がりました。私自身も初めてワークショップIの主担当となり、新1年生と接していますと、結構ハードなカリキュラムではありますが、この地で新たな生活を始めた学生を含め、(満開の桜の下での懇親会等の威力もあったのかもしれませんが)新しい環境や仲間との生活への適応は取りあえず順調に進んでいるのではないかと、少しほっとしています。そのような中で、各自がこれからの目標と具体的にやるべきことを認識し、本格的に邁進する次のステップへと進める軌道に乗ってきているのではないかと感じています。

人間の一生の中で、仕事や学業等の関係で、自分の属する組織を変えて、新たな環境に身を投じたり、生活の場を変えたりしなければならなくなることは少なくなりません。私自身、外交に携わる仕事柄、国の内外を問わず多くの異動を経験し、新たな環境でのスタートと速やかな適応という課題に直面することは数多くありましたが、やはり土地勘のない初めての場所でのスタートは、それほど容易なことではありません。生活の場と仕事の場の双方で、また、手続的な面と内容の両方の面で、さまざまな公式・非公式のルールや慣行、それまでの前例や物事の相場観、そしていろいろなアクターの役割や関係などを、早いうちに自分のものにして、その上でそれらを使いこなして自分らしさを発揮していくということはなかなかチャレンジングなことであると思います。

しかし、自分が新たな活動を始めるその組織やそれぞれの「場」を動かしている規則や手続、さらには、主要なアクターの間のダイナミズムをできる限り早くマスターし、それらを踏まえて自らの発想、付加価値を実現できるように努力することの重要性は、日本、外国を問わず基本的には同じであると思います。暫く前に、ニューヨークの国連代表部に勤務していたときに印象深かったことの一つは、マルチの組織、会合においてルールと手続きを知ることの重要性です。国連のように世界中の国が集まって会合をし、ディシジョン・メーキングをしようというところでは、細かいところまで多くのルールがあります。例えば議事進行において、どこでどういう種類の発言ができる、どういう手順で投票をする等、すべて規則、慣例があり、それを知らなくては、いかに優れた内容の発言をしたり、提案をしようと思ってもどうにもなりません。

この点、特に途上国の代表部の中には、何年もの間、国連代表部にいてそのようなルールや前例を熟知し、議事進行に良い意味でも悪い意味でも存在感をしめし、その方面で一目置かれている(おそれられている)ような人たちが少なくありませんでした。なかには、議事の遅延だけのためにそのような手続を駆使する者もいて、比較的短期で定期的に交替する先進国の者にとっては、そのような人達に伍してやっていくのは一苦労です。マルチの場で、どんどん展開していく局面の中で、ルールや慣行を踏まえて適切に対応していくのは、必ずしも頭の中だけの理解でできることではなく、多分に経験がものを言う世界とも言えて、常に緊張感をもって「感度のよい」対応をしなければなりません。

このように、いろいろな意思決定過程において、ルールや手続を知ることは極めて重要で、すべての基本とも言えます。他方で、191カ国が会合する国連で改めて感じたのは、やはり真に尊敬されるのは、上述のような手続面でのチャンピオンではなくて、サブスタンス、すなわち実質的な内容の面で貢献できる人、国だということです。多くの立場が対立する議論において、周囲の信頼を勝ち得ていくことができるのは、困難な課題について、新たな視点からの提案を行い議論をリードできる人、或いは多くの対立する意見を見事に調整しつつ問題の解決を前進させる能力を持った人、国ということができます。

21世紀の国際社会は、様々な脅威と課題に直面していますが、これらの課題をどのように乗り越えていくのか、そのためにどのようなルール・制度を構築していくのか、国際社会の構成員一人一人が、自らの課題として取り組み、応えを出していかなければなりません。とかく、日本人は、ルールを守っていく面では優れていても、新たなルールや制度を発想し、主張し、実現していく面では、まだ十分に力を発揮しているとは言えないようです。これからの時代には、日本の立場を踏まえて、国際的なルール・制度づくりに積極的に貢献していくことが、日本の国益を守っていく上でも極めて重要なことと思われます。来年度から導入される公務員試験の見直しにおいてもそのような必要性が認識されているようですが、この公共政策大学院における試みが、そのような人材の育成につながることを期待しつつ、今年の若葉が元気よく育ち、豊かな実りをもたらしてくれる日を楽しみに新1年生の成長を応援していきたいと思っています。

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