東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.33
(2007年12月19日配信)

■追加募集のお知らせ

 2008年4月入学志願者を対象とする追加募集を下記の予定で実施します。

出願受付期間平成20年1月24日(木)〜1月30日(水)
入学試験平成20年2月16日(土)
最終合格者発表平成20年2月22日(金)
試験会場東北大学公共政策大学院(宮城県仙台市青葉区片平)

■HP更新について

 インターンシップの頁を掲載しました。
 http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/internship/

 本大学院では2004年の開校以来、関係機関に大学院の方からインターンシップのプログラムについて提案を行い、双方で相談しながら独自のインターンシップ・プログラムを実施してきました。これは、政策の立案・企画を集中的に体験するものであり、「実務経験」の一端を在学中に身につけることを狙いとするものです。いうまでもなく、このようなプログラムは研究者教員のみでは構築できず、毎年度インターンシップを担当する実務家教員が、精力的に関係機関と交渉して、作り上げてきたものです。こうした経緯一つをとっても、他の公共政策大学院と比べた本大学院の特色が表れています。

 これからも一層のプログラムの充実を図るとともに、その内容についてもHPを通じて発信していく予定でいます。

■教員エッセイ

 今回は、8月に環境省より赴任した苦瀬雅仁教授からのエッセイをお届けします。

東北大学公共政策大学院の学生に接して感じ、思うことと本大学院の役割などについて

苦瀬雅仁(実務家教員・環境省より派遣)

1 学生に接して感じること

東北大学公共政策大学院に8月に赴任しました。学期は10月からですし、まだ日は浅いのですが、この間に学生諸君と接して、とてもすがすがしい気持ち良さを感じています。このような学生たちが集まって互いに磨きあうことができるという本大学院の状況を見ると、正直なところ、自分が若ければここに入りたかったと思うぐらいです。

それをもう少し具体的にいうと学生から以下のようなことを感じているからです。

(1)志の高さ

第一に、学生から「志の高さ」というものが伝わってくるということです。
この大学院の学生は、皆、広い視野で社会を見つめつつ、社会の問題は何か、それを良くするためにはどうしたらよいかについて、また、自分自身が社会に出てどのようにその解決に貢献するのかについて、よく考えて(少なくとも考えようとして)います。
例えば国際社会の中での日本の現状だったり、日本各地での限界集落の問題だったり、出身地であり就職希望先である○○県の課題だったりといったことについて実に真摯に考えています。
この志の高さは、卒業後の進路を民間に選ぶか公務に選ぶかにかかわらずここの学生に共通するものと思われます。
そのような高い意識を明確に持ちつつ、学習・研究に励み研鑽を積んでいるということが、ワークショップや授業での議論、あるいは自由な会話の中から良く伝わってきます。

(2)人柄の良さ

第二に、学生たちに共通して人柄の良さを感じます。(前任の西久保先生が「みんないい子だよ。」と言っていたのが本当だと実感されます。)
良い人柄だと言うのは強さ(社会の最前線であるいは指導的な地位で必要となってくる強さ)が足りないということではありません。
必要な強さを中に持ちつつ、同時に、政策を考える上でも政策の実現過程で重要な人間関係という面からも重要な、思いやりの心といったものがあるということが、ワークショップなどの授業においても、その前後の自由な会話等からも感じます。
おそらくこれは第一の点として挙げた広く社会公共を考える志の高さと根底で連動するところもあるのでしょうし、また東北大学の環境が育んでいるという面もあるだろうと思います。

(3)学生の能力が向上していくこと

第三に、上に述べた二つとは少し異なる性格のものですが、やはり学生と接して得る印象で喜びを感じさせるもの、そしておそらくはこの大学院の役割と関係してより重要と思われるものがもう一つあります。
それは学生の総合的な能力が公共政策大学院での教育を経て高まっていくということです。政策提案などについての2年生(さらには卒業生)の発言などを聴くと、偏りなく問題を捉えること、思い込みに陥らず異なった視点からも考えるといった視野の広さ、思考の深さ、論理的な分析・整理・構成能力、そして現実を的確に踏まえる、といった点、さらに説明の仕方や話し方といった点を含めて優れたものを感じます。(おそらくは調査の過程で、アポとりなどで見知らぬ人に飛び込んで行くような能力も身につけたことでしょう。)これは1年生やさらには入学志願者が面接で見せる様子と比較することで、より明確になるように思われます。もちろん1年生や入学志願者でもそのような点で優れたところを持つ学生は多々いるのですが、総体として比較してみると、やはり上級生・先輩にはより強く優れた点を感じます。
また、単に下級生・後輩との比較ということだけでなく、似た年頃の若い社会人(第一線の組織にいる人)と比べても、全体を把握し論理的に分析する能力等々に関して優れた点を感じることも少なくありません。
それはおそらく、ある意味で熟度が低い場合もある学部卒の学生がいきなり社会に出て職場での職務を通じたトレーニングは必ずしも常に非常に高い効果を挙げる訳ではない場合もあるのに対して、本大学院では、政策を現実に企画立案推進するための視点や知識、技能、そして実地のトレーニングが、確実に、偏りなく、体系的に、しかも科学的基礎・学問的基礎を踏まえつつ行われており、それが着実に成果を挙げているということなのではないかと思います。(これは、手前味噌に聞こえたら恐縮ですが、しかし、私自身は来たばかりでこれらが自らの教育成果でないのは明らかなので、遠慮なく書かせていただいています。)
具体的に言えば、本大学院のワークショップや論文指導、各種の授業等を通じた本大学院での教育、それを受けての学生たちが研鑽してきた成果というものであろうと思います。
実際ワークショップでの学生の努力は相当なもので、場合によっては課題自体をどう捉えたらよいかというところから何度も議論を重ね、実際の解決すべき問題の現場に赴き、あるいは行政機関はもちろんさまざまの人から実態や意見を聴きだし、その他さまざまの苦労をして、現実的かつ理論を踏まえた問題の解決策を探っていくものになっています。そしてそれを支えてもいる研究の方法論から各分野の深い検討にいたる各種の授業があり、さらに二年次では個人単位のワークショップUでリサーチペーパーをまとめていきます。これらを経ての成果としてこのような成長があるのでしょう。
このことが、3ヶ月あまり経験から実感されるようになってきました。
自分が行うべき仕事が、このように人材を磨いて成果を挙げるという仕事であることが見えてくると、それはまた、新たに仕事に就いた立場の私個人にとっても、非常に気持ちのよいことで、やる気の湧くもととなります。

2 本大学院の役割について思ったこと

以上に述べてきた学生を見ての感想からつながってくることですが、本大学院の役割というものについても感じるところがあります。
本大学院の役割や特長については、私ももちろんここに着任する前からある程度は読み、聴いていました。
また、実務家の能力形成は職場の中での教育だけでは足りない場合があることを自分自身の職場での経験から感じてもいたので、公共政策大学院の意義はある程度理解しているつもりではありました。(私事ですが、米国の公共政策大学院での教育を受けた経験もあります。)

とはいえ、学部卒業者が採用の中心であり、オンザジョブトレーニングを中心とする日本社会で、公務員を目指す学部学生が、直接公務員にならずに敢えて本大学院を経て実務に就くことの積極的な意義・必要性というものについて、私自身心の底から納得していない部分もありました。
しかし、今、短い期間とは言え実際にこの大学院を経験して思うのは、上記1(3)にも書いたように、この大学院でこそできる学生の教育、その結果としての成長が実感できるということです。そしてそこにこの大学院の存在意義が現れているように思います。
それを簡単に二面に分けて再度述べるならば、
@採用される段階の多くの学生に不足するが実務に就くに当たって重要な点(多様な視点で現実を正しく分析し、多様な利害を調整し、政策を実現していくこと。そのために実際に現場に向かっていくことなど)についての能力を加えて送り出す、という意味でも、
A採用された実務者においてもなかなか獲得しがたいが実務において重要であり、公共政策大学院において効率的に習得しうる能力(論理的科学的な調査分析検討などの技能、学問的体系的知識など)を身に着けるという意味でも、
本大学院は貴重な意義を有し、その役割を果たしつつあるということではないかと思います。

日本においては学部卒で採用される道は依然として主流ではありますし、採用されれば仕事は厳しいとは言え収入を得ながら実務者としてのトレーニングも受けられるので、その道を選ぶのももちろん良い道であると思います。
しかし、ここでの2年間は(お金も時間も2年分余計にかかりますが)、それによって公務その他の世界で働くための基礎をよりよい形で身につけ得るものであるように思います。

そんなことを実感し始め、ここでの仕事の機会をいただいたことに改めて感謝しつつ、本大学院がその役割を十分果たすために、自分も役割を果たしていかなければと思いながら、前途有望な気持ちのよい若者たちの成長に少しでも多くの貢献ができることを目指して仕事に向かう今日この頃です。

余談になりますがはじめてこの大学院の学生に会ったのは平成18年の官庁訪問の際でした。当時環境省におりまして、官庁訪問の学生の面接をする立場にありましたが、若手職員の面接を経て有力候補として送られてきたその学生は、当方が繰り出す種々の質問に対して、広い視野での認識を踏まえて、現実と理想をともに見据えて、筋道立てて考えを立派に述べて回答してくれました。それは、単に環境問題に止まらず、日本の経済や社会のあり方世界政治やさまざまのことに及びました。
三好、西久保両先生が既に環境省からこの大学院に教員として来ていたということは知っていたはずなのですが、その学生によって改めて本大学院の存在を明確に意識しました。
その後図らずも、かつ嬉しいことに、私はここでの仕事の機会を与えていただきました。
そしてもちろんその学生(卒業生)も環境省で元気に活躍しています。

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