東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.34
(2008年3月18日配信)

■HPの更新について

4月よりHPのデザインを一新します。これからは一層本大学院の授業内容について公開度を高めていきたいと考えています。今後とも、ご注目頂けますと幸いです。

■学生エッセイ:2007年度のワークショップ最終報告会の開催

2008年2月12日にM1学生による公共政策ワークショップT最終報告会が行われ、各プロジェクトから1年間の調査結果が報告されました。また、来る3月24日には、M2学生の中から優秀リサーチ・ペーパー作成者による公共政策ワークショップU最終報告会が開催される予定です。これらの行事で本年度のM1、M2の大学院授業はすべて終了します。

そこで、今回は、公共政策ワークショップTプロジェクトAのリーダーとして報告書の最終とりまとめの責任者となった高島千明さんからのエッセイを紹介します。

平成19年度公共政策ワークショップTの最終報告を終えて

高島 千明(修士1年)

平成20年2月12日、ワークショップTの最終報告会を終え、その後の最終報告書の仕上げと提携していた2市への政策提言とをあいついで行い、今年度のワークショップの活動が終了しました。3月に入り、就職活動に公務員試験の勉強にと、毎日メンバーと顔を合わせていた日々から離れ、皆自身の進路、各々の人生に向けて新たな歩み出しをしています。

私の参加したプロジェクトAでは、「地域自治組織制度のあり方の検討」ということで、地域自治組織制度とはどのような制度なのか多様なあり方を整理し、地域自治組織制度の課題を実際の事例に即して解決に導くことを行いました。1年間の活動を終えて思うことは多々ありますが、特に私自身が強く実感したものとして政策形成からの点とプロジェクト運営からの点をそれぞれ1つずつ、計2点述べさせていただきます。

1点目は、政策形成、政策提言への活動の中で最も苦労した点として、対処すべき課題をどのように抽出し・設定するかと試行錯誤したことについてです。4月から文献調査や、県内外のヒアリング、私たちが独自で実施した557市町村へのアンケート調査等を通じて、地域自治組織の実態把握をするとともに、それぞれの課題を集めました。提携していた宮城県東松島市、大崎市の両市の課題とこれらの材料とを照らし合わせることなどから対処課題の抽出作業を始めました。しかし、課題を洗練させていくに従い、当初の仮説とは異なる結果に行き着くなど、各市町村において地域自治組織の設置目的・制度設計は多様であったため、課題抽出作業は困難を極めました。地域自治組織制度そのものの課題や論点の全国的傾向と、若干異なる課題を有していた両市それぞれの地域自治組織を整理し、多々ある課題の中から、誰の視点から見た課題なのか(行政、地域自治組織の協議委員を務める住民、地域自治組織とは関わりのない住民)、どの段階のものか(制度設計の時点で不備があるのか、設計はきちんとされているが運用に不備があるのかなど)、設置目的への影響はどうか、緊急性・重要性が高いのはどれかなどから、順位づけを行い、なんとか課題の整理をしたという状況でした。また、課題解決策の提案には有効性とともに現場で従事し常に考え接していらっしゃる職員の方などが気付かない外側から見た切り口や学生ならではの大胆さ、と同時に現場での実現可能性も強く求められるものでもあり、それらの観点からの検討も加えると本質的課題を抽出する作業は実に多方面からの検討を要するものでした。数ヶ月集めたヒアリング材料を活用しても判断し兼ねる点に次々とぶち当たり、「地域自治組織」そのものを捉え切れずに考えながら走り続け、政策提言に向けてのビジョンや戦略を固め過ぎずに柔軟に修正し続けたことが、逆にこれまでの材料集めの軸をぶれさせていたというにも気付くことができました。これらの経験を通じ、課題を多角的、論理的に検討し、説得性を高めるスキルは高まったように思いますが、同時に調査研究戦略の計画性、一貫性を早くから立てる必要性も痛感しました。

2点目にプロジェクトの運営面において苦労した点として、目標やゴール設定について述べさせていただきます。私たちはプロジェクトを通じて政策形成能力の向上を図ることを目的の1つに掲げていますが、そのゴールを決めるのは私たち自身だということを忘れがちであったように思います。もちろん、提携したからには、自治体に活用していただけるような有効な提言をすることは私たちに課せられたものであり、責任を持って取り組むべきであります。しかしながら、夢中で作業をこなしていると、提言そのものをゴールとして捉えがちになり、その先のチームや各人の目標を見失い、プロジェクトそのものの停滞を招くことが何度かありました。1人1人の描く将来像があり、大学院やプロジェクト、学外の活動に何かを求めるなど、各人がプロジェクトに求めるものや取り組み姿勢は初期の段階から多少の違いはもちろんあります。それを具体化、共有化せずに活動し、各々の将来像と現実の作業がつながらなければ、そこに近付いているとの実感がなければ、当然取り組む意欲というのは薄れ、作業への義務感のみが残ります。成長実感というのは活動中は得にくく、気づきにくいものだと思います。そこで、やはりプロジェクトにおける目標の明確化、終了後の具体的イメージを持ち、そのために何が必要で、現在の活動・作業はそのどこにあたるのか位置づけを見えやすくすれば、もっとスムーズにプロジェクトを運営することができたのではないかと感じています。

私たちは本年2月で1つの調査研究プロジェクトを終えたわけですが、それは決して終了の達成感のみで語れるものではありません。むしろ課題や、1年では追い切れなかったという反省点を多々残しています。しかし、これらの反省点を明確化し、逆に原動力の一部に取り込み、再度来年度の研究に挑戦できる、活かせる機会があるというのは本校のカリキュラムの1つの利点ではないかと考えます。1年次のプロジェクトは活動時間や負担が大きかった分、それぞれが精魂こめて取り組んだ分、どんな形にせよ各人にもたらしたものは大きかったことと思います。これらを踏まえ、人生の岐路である就職活動や試験勉強に生かし、来年度のワークショップUにおいても今の想いを忘れずに取り組み、私たちの将来像に向けて、今を、これからを積み重ねていきます。

■教員エッセイ

今回は、8月に農水省より赴任した海野洋教授からのエッセイをお届けします。

仙台に吹く新しい風

海野 洋(実務家教員・農水省より派遣)

昨年は「格差の問題」が大きく取りあげられました。夏の参議院選挙では「地域間の格差」が、そして年末には「プロ野球チームの戦力格差」が。

仙台勤務は2度目ですが、前回(平成16〜17年)は「楽天の加盟問題」が新聞を賑わしていました。新チームへの地元市民の熱狂的な応援には正直驚きましたが、それでも入場者数はかなり厳しいようです。

野球から自治の在り方まで地域性をどう考えるたら良いか−以下は、3年前に書いたものですが、その思いは基本的に変わっていません。あえて、このNLに載せたいと思います。


○仙台に吹く新しい風を感じながら

この秋、仙台が日本中のプロ野球ファンの熱い注目を集めた。IT関連2社がここを本拠地とする新球団として名乗りを挙げ、結果「楽天」の参入が決した。野球好きにとって、身近で試合を見るチャンスが増えることは大歓迎である。しかし、球界を揺るがした問題を根本から克服するためには、更に相当の努力が必要であろう。近年プロ野球の魅力が減じてきた原因は、各球団戦力の著しい不均衡にあると考える。私見によれば、資金力にものを言わせ、ドラフト制度をねじ曲げて某チームが有力選手を集めた結果であるが、そもそも各チームの収入格差は、他球団の単なる努力不足にのみ基因するものなのだろうか?

昔日「武州豊島郡江戸」と呼ばれた町は、今日人口1200万人の世界有数の都市となった。ここをフランチャイズとする2球団は、単純平均すれば600万が顧客対象である。他方、仙台市は103万人・宮城県は235万人で、岩手県・福島県と合してようやく588万人に達する。県央の盛岡・福島両市民なら新幹線に乗り30分程度で到着するとは言うものの、内野席の料金位は軽く吹っ飛ぶ。そう度々仕事帰りにビール片手で楽しく観戦と言う訳にはいくまい。同様なことは広島市(114万人)にも当てはまろう。

プロだから個性に満ちたチームの闘いであって欲しい。投手力重視の編成よし、打力優先もまたよしである。しかしそれは競争条件がほぼ均衡した上での話である。仙台市民の熱い思いは理解しつつも、これを実現するためには、東京など一部地域とそれ以外の地域との間のハンディキャップを是正した球界運営が不可欠であると確信する。野次馬ながら、「総年俸キャッピング制」と「TV放映権料の(一部)再配分制」の導入が、筆者の年来の主張である。前者は、メジャー・リーグが採用(「1人の高年俸以外は低年棒」、「全員が平均的年俸」などチームの編成は自由だが、いずれにせよ年俸合計は一定額以内)、後者は、Jリーグが採用(コミショナー事務局で一括管理の上、各チームに配分)している。

自由経済の下では、各自が最大の努力を傾け、懸命に生きていかなければならない。しかし同時に、誰もがその地理的条件から自由たり得ないことを、常に忘れてはなるまい。このことは、「世界に拡がる多様な農業の共存」や「我が国における個性ある地方自治の展開」の主張とも共通する。チーム(国、地域)をどのような姿としていくかは各自の自由だが、選手が揃わないような状況(過疎)、低年棒しか払えない状況(低水準の雇用機会や生活環境)では、ゲームにならない。多くの国で国境措置(関税など)が設けられ、我が国の行財政で有効な調整(補助金、地方交付税)が行われてきた所以である。

来シーズン以降、戦力が均衡した中で、個性豊かなチームによる熱戦が行われることを、そして願わくは、東北に密着した「楽天イーグルス」と我が熱愛する「横浜ベイスターズ」との間で日本一が争われることを期待して止まない。

<東北農政局・土と水と、人間と・平成16年11月号>

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