東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.36
(2008年7月9日配信)

今回は、このたび実施される入試説明会のリマインドです。

■入試説明会

入試説明会を下記の予定で実施します。

(1) 仙台会場
7月11日(金)12:00〜13:00 東北大学川内キャンパス 法学部第2講義室
http://www.law.tohoku.ac.jp/access/
7月22日(火)15:00〜16:00 東北大学片平キャンパス 本部棟第2講義室
http://www.law.tohoku.ac.jp/access/

(2) 東京会場
7月25日(金)18:00〜19:00 キャンパス・イノベーション・センター東京(田町)「多目的室1」
http://cic-hp.zam.go.jp/tokyo/guide.html
7月26日(土)13:30〜14:30 キャンパス・イノベーション・センター東京(田町)「多目的室3」
http://cic-hp.zam.go.jp/tokyo/guide.html
8月29日(金)18:00〜19:00 東京神田学士会館・309号室
http://www.gakushikaikan.co.jp/info/access.html

■教員エッセイ

今回は、このたび東北大学理事・副学長でのお仕事を終えて、公共政策大学院の授業に復帰された大西仁教授からのエッセイをお届けします。

「オリンピック直前の北京を訪れて」

大西 仁

先月(2008年6月)の初め、北京を訪れ10日間程滞在しました。清華大学で大学院生向けの講義を行ったり、政治学系の研究者と交流したりするのが主目的でしたが、その外に、中国政法大学でも講義を行いました。

講義や研究会では、これらの大学の学生や若い研究者が大変に高い水準の議論を展開することに感銘を覚えました。中国ではこれまで、自然科学に比べて、人文・社会学分野は、厳しい思想・言論統制の影響もあって、やや不活発という印象がありましたが、今回訪れてみて、いよいよ人文・社会科学分野でも、優秀な若い人たちが自由奔放な学問的好奇心と強い情熱を以て取り組み始めたと感じました。

さて今回の北京訪問中、中国の方達と話しをしていて最も大きな話題になったのは、開催を2か月後に控えた「北京オリンピック」と、先月に発生して大惨事をもたらした「四川大地震」でした。そこで、以下、この二つに関連したことについて述べることにします。

北京オリンピックは2008年8月8日午後8時8分から開会式を行うことになっています。これは、「8」という縁起の良い数字を並べた時刻にオリンピックを開始して、大いに好運を招き入れようということのようです。ちなみに、中国では、一般に、マンションの8階が財産を呼び込むということで、他の階よりも高く売られるそうです。さて、北京オリンピックでは、聖火リレーが、6月下旬の現在、中国各地を回っていますが、少し前には、海外各地で行われ、チベット独立派とその支持者による「聖火リレー妨害」が頻発し、大きな話題になりました。この事件は、国際社会と中国社会に、少なくとも次のような興味深い変化をもたらしたと思います。

まず、欧米社会が、中国が政治的にも経済的にも「大きな存在」になっていることを改めて実感したということがあります。「聖火リレー妨害」をめぐって、欧米の主要マスメディアは、チベット独立派の側に立って、中国政府の対応を批判するという姿勢が目立ち、欧米の諸政府や世論もそれに同調する傾向が強かったと言えるでしょう。ところが、中国国内で、そのような諸国、特にフランスへの反発が強まり、不買運動などが開始されると、これらの国の政府も企業もあわてて中国世論・政府への釈明に奔走して回るという事態が現れました。これは、今回の事件を通じて、欧米の企業が中国での経済活動ができなくなると極めて大きな打撃を蒙る、それ程中国は大きな存在になっている、と欧米社会が気付いて愕然としたということだったと見ることができるでしょう。

その一方で、この事件は、中国社会にも変化を迫りました。中国政府は、「チベットは中国の不可分の領土である」という、中国にとってしごく当然であり、又、国際社会の大半も公的に認めている立場をデモンストレートしているだけなのに、なぜかくも国際社会で孤立してしまうのか、大いに困惑したことと思います。そして、いくら立場が正当でも、こわもての「聖火リレー防衛隊」のランナーを走らせたり、テレビで、いかにも政府の立場の代弁者という印象を与えるアナウンサーが中国政府の公式見解を繰り返したりしていては、国際社会に違和感を与えるだけだと気付かざるを得なかったと思います。そして、その結果、中国も国際社会とのコミュニケーションの在り方を大きく改め始めているように思われます。

先月の四川大地震の発生後、日本のテレビニュースにも何回も報道されましたが、中国のテレビ局の報道記者が、無残に崩壊した学校の校舎を背景に生々しく被害の様子を伝えるということが何日間にもわたって、繰り返し行われました。私が話した中国の人達によると、このような報道のやり方はこれまではなかったそうです。このようなマスメディアの報道の在り方の変化の原因の一つには、今回の地震を機に、国内の世論が中国の指導部への批判を強めていることがあると思います。すなわち、世論の多くが、これまでの中国政府の「失政」の結果、今回の地震の被害が社会的弱者である貧困層や子どもたちに集中していると感じており、ここで政府の公式見解ばかりを前面に出す従来の報道スタイルを続けていると、世論の怒りに火を注ぎかねないと指導部が判断しているものと思われます。そしてもう一つの原因として、指導部が国際世論を強く意識しているという事情があると思います。すなわち、今回の大地震には当然、世界も注目している、ここで、従来のような報道のやり方を続けていると、国際社会に「中国はやはり異質だ」という印象を強く与えて、オリンピックの成功をも危うくしかねない、そのような判断が働いていると思われます。

最後に、今回の四川大地震では、日本から緊急援助隊が駆け付け、中国の多くの人達が感動したと日本でも報道されましたが、私が接した学生の多くも、日本からの支援への感謝の気持ちを率直に表明してくれました。その中である学生は、「このような自然の大きな脅威を前にすると、人間は小さな存在だと感じずにはいられません。そして、そのように感じていた時に、日本からの援助隊が来てくれて、大きな自然災害に人間は国境を越えて立ち向かわなければならないと痛感しました。」と感想を述べていました。日本がかつて東京オリンピック(1964年)を機に国際社会の「正会員」になったように、中国社会も、今確実に国際社会の中に大きく踏み出そうとしているようです。

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