東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.37
(2008年11月17日配信)

■学生からのエッセイ

 去る10月19日から24日に、国際的なテーマを調査研究している公共政策ワークショップの学生たちが、中国清華大学で現地の学生たちと共同セミナーを開催しました。その模様を記したエッセイをお届けします。

「中国の今を体感!相互交流の大切さを知る」

東北大学公共政策大学院修士1年 太田晶久

「おお。鳥の巣だ」。
北京首都国際空港からの移動中、車窓からオリンピックスタジアムが見えた。中国が国を挙げて盛大に行なったオリンピック。あれから2ヶ月が経つ。「2008Beijing」と書かれた看板やのぼりをいたるところで目にする。北京の街には、まだオリンピックの余韻が残っていた。

2008年10月19日から10月24日までの6日間。東北大学公共政策大学院国際ワークショップ(大西仁教授、金淑賢准教授、学生4名)は、授業の一環として中国・北京を訪れた。目的は、中国の名門大学である清華大学への訪問と中国人学生との交流や現地調査を通して、中国の今を体感することである。清華大学では共同ワークショップを行なった。共同ワークショップは、2日間に渡って行われ、東北大学公共政策大学院国際ワークショップと現地の大学生・大学院生の総勢20名が参加した。このワークショップは、我々国際ワークショップの学生が英語で発表を行い、その後、発表内容について質疑応答を交えながら議論を交わすかたちで進められた。発表は、国際ワークショップの学生各自が関心を持っているテーマについて。「人間関係」、「国際結婚」、「就職とライフプラン」、「中国と日本の相互イメージ」の4つだ。集まった現地の学生は、清華大学及び近隣の大学から集まった大学生・大学院生。みな英語で議論することができる。中には、日本語が堪能な学生や日本に留学した経験のある学生もいた。

慣れない英語での発表と議論。中国人学生からの質問の嵐。国際ワークショップの学生達は、四苦八苦しながらも、中国人学生からの質問に答え、積極的に議論に加わった。「中国人は、家族を支えることを第一に考えて職業を選ぶ。勤めている会社に忠誠を誓うようなことはあまりない。条件がよければ、すぐに転職する。日本人は何を基準に職業を選ぶのか」。「本当に愛は国境を越えるのか」。「郷土愛というのは、本当に存在するのか」。様々な意見が飛び交う。大西教授と日本語堪能な中国人学生による助力もあり、日本人学生と中国人学生の間で、激しい議論が展開された。中国人学生との議論を通して、我々の発表のテーマについて、日本人と中国人の間で考え方の異なる点がいくつか見られた。しかし、和を重んじることや郷土を大切に思う気持ちは、日本人と中国人の間でも共通しているのではないかと感じた。

写真1

清華大学での共同ワークショップを終えた後、現地調査の一環として、北京市内及び郊外への視察を行った。視察には、清華大学から大学院生2名が引率として同行してくれた。郊外への視察では、万里の長城(八達嶺)と明の十三陵に出かけた。両地とも中国各地や海外から訪れるたくさんの観光客で賑わっていた。特に、八達嶺は、オリンピックの期間中入場規制されていた影響で、混雑しており、身動きができなくなるほどであった。天候はあまりよくはなかったが、山沿いにどこまでも続く長城は圧巻だった。思わず見とれてしまう。

市内への視察では、オリピック記念公園、王府井、大柵欄、天安門広場、そして故宮を訪れた。市内は、地下鉄を使って移動した。オリンピック開催を機に、北京市の地下鉄は、車両を新しくし、切符はすべてICチップ搭載にしたそうだ。オリンピックのためだけに新しい路線も新設していた。中国が、いかにオリンピックの開催に力を注いだかが垣間見える。また、北京市内には、巨大な建物が多く建てられており、建設中の建物もいくつかあった。北京市では、ここ数年で、市街地開発が進み、巨大な建物がどんどん建てられているそうだ。中国の経済成長の凄まじさを感じた。

「中国は好きですか」。北京市内視察の移動中、同行の中国人学生に尋ねられる。私は、今回の中国研修の中で、この時の出来事が最も印象に残っている。「中国と日本の間には様々な問題がある。中国のことが好きな日本人は少ないのではないか」。たしかに、日本人の中で、中国のことが好きだという者は少ないように感じる。彼が指摘するとおりだ。彼によると、中国人も50パーセント近くは、日本のことをあまり好きではないらしい。「近い国なのに、お互いのことをよく知らないからではないのか」。私は答えた。彼はそれを聞いて頷いた。もっと彼に伝えたいことはあった。しかし、お互い母国語ではない英語での会話であるため、伝わりきらないところもあった。私の下手な英語に、彼は、誠実に耳を傾けてくれた。それがすごくうれしかった。下手な英語でもいい、伝えようとする気持ちが大切だ。そう感じた。その後も、いろいろな話をした。かなり打ち解けた関係になれたと思う。

この6日間で、多くの中国人と交流し、中国の歴史や中国の今に触れることができた。「現地の中国人と交流し、実際の中国に触れることで、中国に対するイメージが変わった。やはり、若いうちに外国を見ることはいいことだな」。国際ワークショップの学生の一人が帰りの飛行機の中で言った。彼は、海外に行ったのは、今回が初めてだそうだ。私も、中国人学生との交流を通して、これまで中国人に対して抱いていたイメージが変化したように感じる。もちろん、我々が接したのは、中国人の中でもごく一部の人間だ。しかし、今回の中国・北京での研修で、現地の学生との交流を通してお互いをもっと知ることの大切さを実感した。お互いをもっとよく知ることで、互いにもっている負のイメージを払拭できるのではないか。そう感じている。この考えは、我々が、現在、研究している「多文化共生」の考えにつながる。同じ地域の中で、日本人と外国人がお互いのことをもっと知りあえるにはどうすればいいのか。中国での研修で学んだことをこれからの研究に活かしていきたい。

中国から帰国後、中国でお世話になった清華大学関係者及び共同ワークショップ参加者にお礼メールを出した。数日後、送ったお礼メールに対して返信メールを送ってくれた人がいた。そのメールには、「あなたは、私の数少ない日本人の真の友人の一人だ。」と記されていた。日本と中国。両国の間には、様々な問題がある。しかし、時間はかかるかもしれないが、何らかのかたちで、お互いのことをもっと分かり合う機会をもうけていけば、解決できる問題もあるのではないか。お互いの国民が真の朋友(パンヤオ、中国語で友人という意味)となれることを切に願う。

写真2

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