東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.38
(2008年12月15日配信)

■学生からのエッセイ

東北大学大学院法学研究科では、学外の行政機関と提携し、毎年度インターンシップを実施しています。これは、大学院の趣旨に添った特別のプログラムを当該行政機関と協働で作成し、実施するもので、もっぱら政策企画業務に配属させ、会議等を傍聴し資料を作成するなど、現場の行政機関における業務を体験するものです。

本年度のインターンシップ先については、ページを更新しましたので、ご覧ください。
http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/internship/

ここでは、宮城県企画部地域振興課、仙台市環境局廃棄物事業部リサイクル課でインターンシップを行った学生の体験的エッセイをお届けします。

平成20年度 宮城県企画部地域振興課でのインターンシッププログラムを終えて

村島 弘恭(修士1年)

平成20年8月18日から29日までの約2週間、宮城県企画部地域振興課を受け入れ先としたインターンシッププログラムに参加しました。

公共政策大学院では政策プロフェッショナルを目指すことを目的として、ワークショップや通常の講義等の教育プログラムが設定されています。中でもインターンシッププログラムは政策立案の現場での研修を通して、実務経験を積むことを目的としています。

まず、受け入れ先であった地域振興課の業務について簡単に説明したいと思います。地域振興課では、十数年前までは主流であったハード事業が現在では事業規模が大幅に縮小されており、ソフト事業が中心となっています。例えば、過疎地域を始めとする条件不利地域への対応や移住・交流事業あるいはリゾート開発や都市整備事業等、多くの事業を取り扱っています。

次に、今回のプログラムに参加した目的について2点に分けて述べさせていただきます。まず1点目は県庁と市町村及び地域の関係を見ること、そして2点目は県庁における過疎振興の取り組みについて現状や課題を把握することを目的としていました。このような目的を持つに至ったのは、現状では、地方自治における県の役割が曖昧になってきているということ、そして厳しい財政状況の下では地域をどのように支援していくのか、という課題について県として明確な方向性を打ち出せていないという問題意識があったからです。

実際のインターンシッププログラムの内容としましては、各担当者による業務説明に始まり、実際に過疎地域を中心に県内の市町村へ現地調査に赴き、地域のキーパーソンを対象としたヒアリングを行う機会も得ました。また、プログラムの中で、幸いにも知事レクや市町村との会議に出席する機会にも恵まれ、非常に貴重な経験を積むことができました。

それでは、2週間という短い期間ではありましたが、インターンシッププログラムに参加して、感じたことについて、以下3点述べさせていただきます。

まずは、現在、多様な地域の特性に合わせた支援制度の設計が求められているということです。宮城県内には、山村もあれば、漁村もある。その一方で、仙台市のような大都市もあり、同じ宮城県内でも、地域特性は大きく異なっていることが分かります。従来の地域振興政策は、必ずしも地域特性の差異に対応したものでは無かったと認識しています。例えば、過疎地域の認定要件については、市町村単位で認定しているため、いわゆる限界集落の問題に対して、十分な対処が為されていないという点が見られます。やはり、地域に出向いて、地域の特性を把握した上で、必要な支援を打ち出していくことが必要なのだと思います。従来は、県庁の職員が地域に出向くということはほとんど無かったようですが、地域振興課では、昨年度より本格的に地域担当制度を導入しました。地域振興課内の各職員が、県内の市町村を2つほど担当しており、市町村の取り組みに対する助言や地域行事のお手伝いを行うというものです。まだ導入したばかりということもあり、取り組みにばらつきがあるということでしたが、中には従前からの地道な取り組みにより地域と良好な関係が築かれている例もありました。

今後の県の役割についてですが、県庁が積極的に地域に入っていって、地域の課題解決に取り組むための制度があっても良いと、私は考えています。現在、市町村の財政が苦しい状況にあり、職員定員の削減が進めてられています。このような状況下において、市町村だけに地域の課題解決の役割を任せることは必ずしも得策ではなく、少なくとも財政面や人材面で不安のある市町村については、県庁もその取り組みを補完するための制度を設計する必要があると思います。地域振興課が導入した地域担当制度は、あくまで市町村の意向に沿う姿勢で取り組んでいますが、市町村や地域に対する県の関わり方の1つのモデルであると考えています。

次に、「地域振興とは何か」という点についてはインターンシップ期間中を通して、常に考えさせられました。既に述べました様に、従来の地域振興課の役割は、道路建設やリゾート開発などのハード事業が中心でした。しかし、現在の厳しい財政状況の下で、ソフト事業中心の地域振興施策へと転換が図られてきました。しかも、そのソフト事業も、補助金等の財政的支援ではなく、予算措置によらない人的な支援が重視される傾向にあります。実際の支援内容を見てみると、市町村への人的支援あるいは技術的な助言が中心となっていました。従来の地域振興施策では、道路や下水道の整備率の向上を目的としてきた側面があったわけですが、ソフト支援を重視していく中で、「何を以て、地域振興が達成されたと考えるのか」、という点については今後の地域振興のあり方を考える上で検討すべき課題であると思います。

最後に、インターンシップの中で特に印象に残った事を述べて、終わりにしたいと思います。現地調査の際に訪れたある地域の住民の方がおっしゃっていた事の中で、「行政は必要な時だけ話を聞きに来るだけで、地域に投げ返してこない」という発言が強く印象に残りました。現在多くの自治体が市民協働の取り組みを推進していますが、市民との信頼関係が上手く構築できていない例が少なくないように思います。市民協働の取り組みが行政と住民が対等関係にあるという前提に立つと考えるのならば、まずは相手との信頼関係を構築する必要があるでしょう。それは、行政に限らず、私たちが進めているワークショップにおいても同じです。理論的な考察や分かりやすい論理に基づいた政策を打ち出す能力を養成することもちろん重要ですが、実際に地域の現場ではそれだけが課題解決の決め手となるわけではないと思います。政策は住民との信頼関係の上に成り立っている側面もあるということを忘れてはならないだと実感しました。

以上、インターンシッププログラムに参加した際に、感じたことを述べさせていただきました。最後にこの場を借りて、宮城県の職員の皆様にあらためて御礼を申し上げたいと思います。また、今回得たものを生かして、数年後には正規の県庁職員として公務の現場に立てるように、精一杯努力していきたいと思います。

仙台市リサイクル推進課へのインターンシップを終えて

細貝 拓也(修士1年)

東北大学公共政策大学院では、修士1年生を主な対象とするインターンシップが毎年夏季休業中に行われます。期間は約2週間で、受入先としては宮城県、仙台市、国の地方支分部局などが用意され、例年7、8名の学生が参加しています。私は、平成20年度のインターシップに応募し、2008年8月25日から9月5日まで、仙台市環境局廃棄物事業部リサイクル推進課でお世話になってきました。

私がインターンシップに参加した8月下旬は、仙台市における一般廃棄物行政の大きな施策のひとつである「ごみの有料化」を間近に控えており、10月からの施行に向けて職員の方々は大変お忙しいご様子でした。受入先であるリサイクル推進課でも、有料化の関連施策を行っており、このようなホットな話題をまさに現場で体感できたことは貴重な経験だったと思います。

ここでまず簡単に、仙台市における「ごみの有料化」の概要を説明しておきたいと思います。はじめに、仙台市のごみの現状を概観します。仙台市のごみ処理量は、平成12年度の約48万3千トンをピークに減少基調となっています。平成19年度のごみ処理量は、約40万9千トンで、市民一人一日当たりのごみ排出量は、1,087gであり、「仙台市一般廃棄物処理基本計画」の平成22年度目標(市民一人一日当たりのごみ排出量を1,107g等)を一部前倒しで達成している状況です。しかし、仙台市のごみは、全体としては減少傾向にあるものの、それは事業ごみの大幅な減少によるものであり、家庭から排出されるごみは近年横ばい状態であって、家庭ごみの減量、リサイクル推進が課題でありました。また、仙台市のごみ処理にかかる総費用は、123億円であり、そのうち、家庭から排出されるごみにかかる処理費用は79億円であって、多くの税金が投入されているという状況です。

このような課題に対して、ごみ処理にかかる費用を手数料としてごみ袋等に上乗せすることで、経済的インセンティブを働かせ、ごみの減量を促そうという「ごみの有料化」という解決策が取られました。しかし、ただ単にゴミ袋の価格を高くすればごみが減ると考えるのは楽天的であり、また、施策の導入直後は減量効果があっても、住民の方がその価格に慣れてしまえば効果が元に戻ってしまうということも容易に想像できます。そこで、ごみの有料化と並行して、仙台市の家庭ごみのうちの約3割の紙ごみ、約4割の生ごみをきちんと分別する仕組みを整え、リサイクルを定着させていくことが、ごみ有料化の効果を持続させる意味でも重要です。

インターンシップの受入課であるリサイクル推進課では、今回のごみの有料化に伴って市域全体に拡大された紙類定期回収事業および生ゴミ堆肥化容器補助事業を関連施策として持っており、生ゴミ堆肥化容器補助事業に関しては、去年まで年間300件程度であった申請が、今年の8月下旬の時点で3,000件を越えており、市の施策が市民の方々に与える影響力の大きさを実感しました。

インターンシップでの業務についても、生ゴミ堆肥化容器補助事業や紙類的回収事業に関する事務作業のお手伝いが中心となりました。このようなデスクワークの合間に、廃棄物対策審議会や第3回3R推進キャンペーン実行委員会の傍聴をさせていただき、また、市民の方々へのごみ減量、分別の仕方等に関する各種出前講座やごみ収集業者への紙類定期回収に関する説明会の参加、さらには、ワケルバスによる施設見学ツアーの同行まで、非常に幅広い経験をさせていただきました。

今回のインターンシップの成果としては、コピー取りや宛名の確認作業から、審議会や実行委員会、市民向け出前講座の参加まで、市のいろいろなレベルの業務を経験させていただき、市の仕事の具体的なイメージや雰囲気を知ることができた点がまず挙げられます。

また、リサイクル推進課では市民の方々にとても身近な業務を行っていることもあり、市役所の中で働いていても、たくさんの市民の方が訪れ電話が鳴り響き、市役所の外に説明会に出掛ければ、多くの市民の方からご意見や苦情を受け、その一つ一つに丁寧に対応する職員の方の姿を見る場面が多くありました。今まで言葉として理解していた、住民に最も身近な行政主体という市の側面を、実感として認識できたことがひとつの成果であったと思います。他にも、移動中の車内など、市の役割や一般廃棄物行政の課題、市民の方々に理解していただくことの難しさなど率直な職員の方のお考えを聞き、議論できたことが印象に残っており、自分の考えを深めることができました。

2週間というインターンシップの期間はとても短いものですが、WSTの経験を生かし、自ら積極的に行動すれば、実際の期間以上の、そして、用意されたインターンシップのメニュー以上の濃密な経験をすることができると思います。後輩の皆さんには、ぜひ進んで大学院のインターンシップを活用していただきたいと思います。その際は、一学生に対して貴重なお時間を割いてくださっている職員の方々への感謝を忘れず、かつ、積極的に行動すれば、自身の成長や進路選択において有益な機会になることは間違いありません。

最後になりましたが、今回のインターンシップにおいてお世話になったリサイクル推進課および関係各課の職員の方々、また、受入先との調整等にご尽力いただいた諸先生方に感謝の意を表して終わりとしたいと思います。

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