東北大学公共政策大学院Newsletter Vol.49
(2013年8月8日配信)

■2014年度学生募集要項について

東北大学公共政策大学院ウェブサイトに「平成26(2014)年度 東北大学公共政策大学院学生募集要項」を掲載しています。本大学院への入学を検討されている方は、ぜひご覧ください。
http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/admission/2014/application_guidelines.pdf

■2014年度パンフレットについて

東北大学公共政策大学院ウェブサイトに「平成26(2014)年度 東北大学公共政策大学院パンフレット」を掲載しています。ぜひご覧ください。
http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/misc/brochure/brochure_2014.pdf

■2014年度入試説明会のお知らせ(2014年4月入学志願者用)

(1) 東京
 平成25年8月23日(金)18:30〜20:00 東京八重洲ホール・会議室800
 平成25年8月24日(土)14:00〜16:00 東京八重洲ホール・会議室800
 会場については http://yaesuhall.co.jp/accessmap/ を参照してください。

(2) 関西
 平成25年8月23日(金)18:30〜20:00 TKP大阪梅田ビジネスセンター・カンファレンス16A
 平成25年8月24日(土)14:00〜16:00 TKP大阪梅田ビジネスセンター・カンファレンス16A
 会場については http://tkpumeda.net/access.shtml を参照してください。

■教員エッセイ

今回は、2013年7月まで本大学院で教鞭を執っておられた西田主税教授のエッセイをお届けします。

東北大学での3年間を振り返って

法学研究科公共政策大学院 教授 西田 主税

 2010年7月に仙台に着任してから3年が経過し、8月1日付けで任期を終えることになりました。

 大学教員という経験したことのない職務と住んだことのない東北地方ということで、仙台駅に若干の緊張感を持って降り立ち、街並みを眺めながら川内キャンパスまで歩いて来た日のことを今でも覚えています。また、2010年の仙台の夏は冷涼な地方というイメージとは程遠いほどの猛暑でした。エアコンを買いに家電店に行ったところ品切れ状態で、結局涼しくなってきた9月に取り付けることができたというのも3年前の着任当時の思い出です。

 さて、私は、大学教員の前には、主に地球規模の環境問題、とりわけ気候変動問題や砂漠化防止に関する国際交渉などを環境省や外務省で担当するとともに、世銀にある地球環境ファシリティという国際機関で途上国における環境関連対策の資金援助に関する審査などの仕事をしてきました。他方、大学での仕事は、まず教育面では、実務家教員として大学院生達とともに公共政策ワークショップとして調査研究報告書をとりまとめ、行政機関等へ政策提言を行うことや学部生等への環境政策演習や法科大学院での環境法の講義など、従来とは異なった幅広い環境政策の分野について担当することとなり、非常に良い経験になったと思っています。また、大学院における管理面では、入試担当委員として、受験生用のパンフレットの作成や入試説明会の開催、入試問題の作成や合否判定会の実施など、大変やりがいのある仕事をさせていただいたと思っています。以下思い出すままに、3年間を振り返ってみます。

 2010年度の後期から、いよいよ本格的に講義を始めたわけですが、公共政策大学院の根幹的な科目である公共政策ワークショップは、やはり一番の思い出になります。私は、着任してすぐに、「地方公共団体における地球温暖化対策のあり方」というワークショップを前任から引き継いで担当しました。6名の学生達とともに文献調査や行政機関などへのヒアリングなどを通じて政策提言をとりまとめる作業は、大変根気のいるものでしたが、そのプロセスを通じて学生達が切磋琢磨して成長していく姿は教育の醍醐味を感じさせてくれるものでした。また、学生達とともに調査合宿で福島県の柳津にある東北電力の地熱発電所、水力発電所、河川塵芥堆肥化施設等を視察した時に見た学生たちの意欲的な調査活動の姿勢は、座学だけではなく、現場を見ることの重要性を改めて教えてくれました。さらに、夜は学生達とお酒を酌み交わしながら、学生の一芸を見たり、硬軟入り混じった話題で盛り上がったりしたことも良い思い出となりました。この研究調査報告書は、2011年2月に仙台市において説明会を行い、環境行政の幹部の方から非常に高く評価されることとなり、担当教員として学生達を誇りに思ったことを思い出します。

 2011年3月11日、あの悲惨な東日本大震災が発生しました。その時私は、川内キャンパスの食堂にいたのですが、その大きな揺れは経験したことのないものでした。その夜は、電気が止まっていたために、津波による沿岸部の被害のことは知らずに、大きな余震の続く中、電気のない官舎で寒さに震えながら布団の中で朝を迎えたことを思い出します。徐々に津波被害の状況が明らかになる中、発災から数週間経った頃、自転車を飛ばして仙台市の東部地域に向かったのですが、自動車が田んぼの中で逆立ちしているようなその悲惨な状況を目の前にした時の震えるようなショックは今でも忘れることはできません。こうした中、ワークショップメンバーの学生の安否が気になっていたのですが、学生の方から私に連絡があり、「先生がひとりで寂しい思いをしているといけないから、みんなで食事でもしましょう。」ということで、焼き肉を食べたことを思い出します。教員として親身に対応すればこそ、こうした学生の対応につながったものと大変嬉しかったことを思い出します。

 2011年度の前期は、震災の影響で5月から公共政策大学院の講義は始まることとなったわけですが、私は、副担当として、災害法制に関する実証的研究を行うワークッショプに加わり、学生達とともに被災地へのヒアリング調査や災害法制に関する文献調査等を行いました。やはり、この時期は、未だに被災地の復旧は遅々として進んでおらず、改めて津波被害の甚大さを感じるところとなりました。他方、2011年度は、私はワークショップの副担当であったことから、学部・研究大学院向けの環境政策演習や公共政策大学院や法科大学院での環境法の講義なども担当しました。演習では英語文献を使い気候変動問題の国際的な動向をレビューし、また、環境法の講義では、環境法に関する体系的な整理を行った文献や判例を中心にしたのですが、霞が関にいると日々書類の整理に追われて、じっくりと文献を読むこともなかったので、私自身にとっても頭の整理ができる良い機会となりました。

 2012年4月からは、私は、公共政策ワークショップとして「復興に向けた市民・行政協働型の環境政策の課題と推進方策について」を担当しました。学生10名という大所帯のワークショップにおいては、がれき処理の問題、再生可能エネルギー普及の問題、自然環境・グリーン復興の問題を3本の柱として、市民と行政が協働して取り組む方策について検討して政策提言を行うことを目的に、文献調査や被災地の視察調査、行政機関、公益事業者、NPO等へのヒアリングなど幅広い取組みを行いました。特に、思い出すのは5月の毎週末、北は宮古市から南は福島第1原発の接近限界地点まで被災地を学生達と見て廻ったことです。九州出身の学生のひとりは、被災地を目の前にして、「マスコミ報道を見るだけでは、これほど広範で甚大な被害があるとは想像していなかった。他人事のように思えていたが、今日見たことを踏まえて自分も何かの貢献をしたいと強く感じた。」と私にメールしてきました。どちらかというと物静かな昨今の学生達の若い感性を揺り動かすには、まず現場を見ることが重要であるということを改めて感じたものでした。一方、後期に入ってからは、政策提言をまとめるための先行事例調査やディスカッションで学生達の一層熱のこもった取組みが進みました。この時期になると学生達の自主・自律的な取組みの姿勢が強くなっていき、全員参加型のワークショップの効果が明らかになったことを嬉しく感じたものでした。また、調査合宿では、復興国立公園構想の北の入口である八戸市の種差海岸や同地にある東北電力メガソーラー発電施設、さらには、風力等再生可能エネルギーによる町づくりを進める岩手県葛巻町などを学生達とともに視察調査を行うとともに、八戸市のホテルで合宿を行いました。やはり施設を直に見ると学生達の目が輝くことがはっきりとわかりました。また、合宿では、お酒も入って硬軟両方の話題で盛り上がるなど、学生達の一体感が一層強まることとなり、調査合宿の意義を改めて感じました。なお、この研究調査報告書は、2013年2月には、宮城県、仙台市、復興庁宮城復興局、東北地方環境事務所、東北農政局、東北経産局、東北電力など関係機関へ説明して廻ったのですが、その政策提言内容については、いずれの提言先においても高く評価されることとなり、担当教員として本当に嬉しく思ったことを思い出します。

 以上のように、ワークショップを通じた教育面では、3年間という限られた時間ではありましたが、学生達の政策立案能力はもとより、人間的な成長に多少なりとも寄与することができたのではないかと思っています。他方で、研究という側面からすると、自分自身の論文などをまとめることもできず、折角の大学教員という機会を有効に活用できなかったことに若干の後悔が残っています。役所に戻っても諦めずに研究論文にチャレンジしたいと思っています。

 震災直後などは大変なこともありましたが、楽しく、充実した意義のある3年間の大学教員生活でした。教育に不慣れな私を支えてくれた同僚の教員職員や事務職員の皆様、そして私の拙い指導に耐え、「ともに前へ」進んでくれた学生諸君に心から感謝しています。

 東北大学公共政策大学院の益々の発展を祈念するとともに、東北でお世話になった皆様方や学生諸君とまた仙台や東京、さらには学生達の地元などでお会できる日を楽しみに待っています。

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