東北大学公共政策    

 ワークショップA 活動報告

ワークショップAでは、知事や市町村長になったつもりで「故郷を元気にするオリジナルな地域振興政策」を研究してまいりました。研究活動に際し、関係機関や先生方から多大なるご支援ご協力を賜りましたことを、ワークショップA一同この場をお借りして心より御礼申し上げます。

1.前期

まずは、自己紹介を兼ねて地方創生に関するプレゼンテーションを行い、メンバーそれぞれのふるさとについて現状を知ることから始めました。出身地は様々ですが、地域を盛り上げたいという熱い思いが全員のプレゼンから溢れていました。5月からは、ヒアリング調査に取り組みました。東北農政局にお話を伺った際は初めてのヒアリングで緊張しましたが、どの質問に対しても丁寧にご回答いただけたことが忘れられません。

6月には山形県寒河江市でサクランボの収穫体験を行い、生産者の苦労に気づく非常に貴重な機会となりました。そのおかげで、どうやら先生方からは「ワークショップAといえばサクランボ!」というイメージを持たれている(?)らしいです。収穫体験については、こちらの記事(「『フルーツ王国』山形の農園に大学院生が密着!」)でも紹介しているので、ぜひご覧いただけますと幸いです。

7月の中間報告会では、トップバッターという重圧を乗り越えました。地方創生には農業振興やまちづくりなど幅広い観点があるため、チームとしてまとまりのある研究を目指すことが重要であると質疑応答を通じて実感しました。

サクランボの収穫体験

山形県庁ヒアリング

 

2.後期

総務省からいらした石山英顕先生をWSAの副担当としてお迎えし、12月の最終報告会や最終報告書の執筆に向けて、実地調査をはじめとする研究活動により一層取り組みました。

研究活動に際しては、「現場主義」の旗の下、仙台市内をはじめとする東北だけでなく、地域特性や文化を活かした農泊の先進事例等がある沖縄県や、各メンバーのふるさとのある京都や静岡などにもそのフィールドを広げました!ここでは、WSAにおいて数ある研究活動の中でも沖縄での実地調査についてスポットライトを当ててお話します。

沖縄県では、琉球王国時代から連綿と続く伝統的な沖縄料理や泡盛などの特色ある食文化が根付いており、国内外から親しまれています。中でも糸満市では、行政、市民、 民間事業者などといった地域における多様なアクターが連携し、他の地域とは異なる特色を出した「糸満ブランド農泊」が推進されています。こうした取組は農林水産省により第4回ディスカバー農山漁村の宝に認定されており、農山漁村における地域資源を活かした地域振興に向けた先進事例であると考えています。

1日目の10月31日は内閣府沖縄総合事務局、2日目は沖縄振興開発金融公庫、糸満市役所や民泊事業者を含む糸満市観光まちづくり協議会の方々にお話を伺いました。国や自治体等の公的機関、民間の事業者の方々より、地域振興政策の中でも農業・商業・まちづくり・労働分野を中心にお話をいただくことができました。

 

〈内閣府沖縄総合事務局での訪問風景〉

2日目の糸満市観光まちづくり協議会へのヒアリング終了後、同協議会の方々のご指導の下、沖縄の宮廷料理である東道盆の料理体験を行いました!メンバーで協力しながら東道盆を無事作ることができました。作った料理を囲み、糸満市の方々との食事会やカチャーシーでの交流を楽しみました!ひとしきり食事とカチャーシーで心を通わせた後に、民泊として糸満市近郊のお宅に伺いました。民家のみなさんは私たちを温かく迎え入れてくださり、みなさんと「いちゃりばちょーでー」(一度会えばみな兄弟)になれたことは一生の思い出です。

〈力を合わせて作った東道盆〉

こうした沖縄での体験を通じ、改めて地域特性に応じた地域振興を検討する必要があることを認識することができたと考えています。特に、農泊や料理体験等から、農業がもたらす「食」や食文化、交流によるコミュニティ形成機能などの効用を学ぶことができました!

2泊3日の行程の中ではあいにくの雨天・曇天続きで晴れ間を拝むことができず、沖縄の綺麗な海を見ることができなかったのが唯一悔やまれます…

ですが、誰よりもノリノリで踊っていらした松村先生のお姿を拝見できたこと、移動に使用したモノレールを乗り過ごしそうになったことなど、そして沖縄の皆さんと心を通わせることができたことなどは私たちの思い出の一ページとして刻まれています。

〈「いちゃりばちょーでー」になれました!〉

沖縄訪問後も、私たちWSAは精力的に実地調査に取組みました。中でも、地方創生を所管されている内閣官房デジタル田園都市国家構想実現事務局の内田審議官からオンラインにてお話を伺いました。地方創生に関する全体的な課題認識を再度全員が共有することにも繋がり、WSAの研究内容をアップデートさせることができたと考えております。

最終報告会では、当学公共政策大学院の実務家教員をされていた山形県庁の神山次長にコメンテーターとしてお越しいただきました。報告後には、提言と施策の違いにも触れられ、WSAの「オリジナル」な地域振興政策について称賛のお言葉を頂戴しました。中間報告会でのご指摘を踏まえ、各分野における提言を「地方創生」におけるスキームを軸として整理いたしました。これにより、各提言の連関や、WSAの考えるこれからの地域の在り方について論理的に明らかにするよう試みました。

〈国のスキームを踏まえたWSAの提言方向性〉

*図の左が国の政策(まち・ひと・しごと創生総合戦略)のスキーム、右がそれを踏まえたWSAの提言方向性

最終報告会後も、私たちWSAはこの1年間の活動を取りまとめた最終報告書の執筆作業に注力いたしました。執筆・編集作業に際しては、この一年でお話を伺った皆様から伺ったことが走馬灯のように脳裏にひらめくことが多かったように思います。同時に、この研究活動を通じて得られた一人一人の成長や研究成果を強く実感することができたとも考えております。

3.最後に

研究活動は長いようであっという間であり、ワークショップAのメンバー全員が全力で駆け抜けてきた1年間でした。現場の声と真摯に向き合い、対話を重ねながら研究に取り組んだ経験は将来の糧になるものと確信しています。

最終報告会でコメンテーターをお願い致しました山形県庁の神山次長(公共の元実務家教員)より、「粗削りでも学生らしいアイデアが光っていました」と賛辞をいただけたことが印象に残っています。学生の視点で課題を分析し政策提言を行えたことは、ワークショップの醍醐味の一つではないでしょうか。

これまでの活動を振り返ってみると、壁にぶつかっても助け合える仲間に出会えたことや、ヒアリング調査で親身にご対応いただけたことなど、多くの方の優しさを感じることができました。ワークショップで育んだ「人との縁」を今後も大切にしながら、引き続き研究活動に励んでまいります。

 

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