島田明夫 SHIMADA Akio

専攻科目

災害対策法、都市法、都市環境政策

略歴

 1956年東京生れですが血統的には島根県人です。1980年3月に東京大学経済学部を卒業して、4月に上級職(現在の総合職)国家公務員として建設省(現 国土交通省)に採用されました。

 その後、建設省、国土庁、外務省、内閣府、国土交通省等において30年にわたり、土地住宅政策、都市政策、地域産業政策、道路管理政策、在英国日本国大使館一等書記官、首都機能移転、防災対策、下水道政策、地方整備局の用地及び総務の統括など幅広い分野で、主として政策や法令の企画立案などに従事して参りました。

 特に、1999年から2001年まで、国土庁防災局(後に内閣府)の防災企画官として、有珠山及び三宅島の噴火災害、東海村のJCO臨界事故、熊本県不知火町の高潮被害、鳥取県西部地震、芸予地震などの様々な災害に対応して参りました。

 2006年5月に「閉鎖性水域における持続可能な水質保全のための排出枠取引モデルとポリシーミックス」に関する学位論文により東京大学博士(工学)の学位を取得しました。これを契機として、学術研究・教育の業務に従事する機会をいただき、2007年10月から2009年3月まで東京大学大学院法学政治学研究科客員教授を務め、「環境政策演習(環境政策の法と経済学)」を担当するとともに、2008年7月から 2010年7月まで政策研究大学院大学教授を務め、「まちづくり法の基礎」、「まちづくり政策論文演習」などを担当しました。

 2010年8月に東北大学大学院法学研究科教授に就任いたしました。また、2012年4月からは、東北大学に新設された「災害科学国際研究所(IRIDeS)」の教授を兼務しております。東日本大震災からの復興や人口減少社会に対応したまちづくり法制などについて、学生の皆様方と一緒に勉強して参りたいと存じております。

公共政策大学院での授業に当たって

 2017年度においては、「防災法」、「都市法政策Ⅰ・Ⅱ」の授業を担当するとともに、「都市環境政策論演習」を担当しました。 2011年度から2013年度までの3年度においては、ワークショップⅠ「東日本大震災に照らした災害対策法制の問題点と課題」を担当して、内閣府防災部局、国土交通省東北地方整備局、復興庁宮城復興局などの国の機関、宮城県、岩手県、仙台市、名取市、東松島市、石巻市、女川町、南三陸町、気仙沼市、陸前高田市などの被災自治体に対する実態調査を行って、広域かつ大規模な災害に従前の法制が十分に対応できなかった点を実証的に分析し、特に法令レベルにおける改正点を中心に政策提言をまとめました。また、2015年度においては、ワークショップⅠ「東日本大震災からの復興まちづくり法制に関する研究」を行って、今後の広域大規模災害にも対応しうる復興まちづくりの在り方を学生たちとともに考えてきました。

 2018年度においては、ワークショップⅠ「人口減少社会に対応したまちづくり法制に関する研究」を担当して、東北地方の中小都市に対するヒアリング調査を行って、コンパクトシティの実現に当たっての従前のまちづくり法制度の限界を明らかにしたうえで、少子高齢化の中においても、そこに住む地域住民が望むより良い居住環境の実現、歴史や伝統文化、自然環境と共生しながら農林水産業を含めた地域産業とともに生きてゆくことができる住みよいまちづくりを進めるための法制度の在り方を学生たちとともに考えてみたいと思っております。ヒアリング・実地調査の対象市町村は、岩手県紫波町、花巻市、陸前高田市、宮城県加美町、大崎市、登米市、南三陸町、女川町、石巻市、山形県鶴岡市の10自治体です。

 各年度を通じて、ワークショップⅡにおいて多数の学生のリサーチペーパー(修士論文)の指導も行い、社会に優秀な人材を送り出してきました。彼らの今後の活躍が楽しみです。

研究室にて

 2011年3月11日14時46分頃、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生しましたが、そのときは川内の研究室におりました。研究棟は耐震補強が施されていたために幸い怪我もなく無事でしたが、その直後から、自分は今何ができるのか、何をすべきなのかと考えました。そこで、防災企画官としての貴重な経験を活かして、災害対策法制について研究してきました。

 4ケ年度にわたるワークショップⅠの研究成果をまとめて、2017年7月に(株)ぎょうせいより「地域防災力の強化—東日本大震災の教訓と課題—」を上梓しました。

 一方、人口減少時代に入った日本においては、人口増加や持続可能な経済成長を前提として組み立てられてきた社会・経済システムに大きな変革が求められています。日本の都市は、規模の大小を問わず、中心市街地の空洞化・衰退、人口減少に逆行する市街地の拡大、地域産業の衰退といった困難な状況に直面しておりますが、主として経済成長に伴う都市の拡大をコントロールする手段として機能してきた都市計画法、建築基準法を中心とする従来の都市法の体系が、規制緩和の流れの中で新たな局面に十分に対応できなくなりつつあります。この問題点は、人口減少が進んできた三陸沿岸部の都市の復興に当たっても大きな課題であると考えられます。

 このような状況に対し、生活圏レベルにおいて、人口減少を前提としながらも、固有の文化・伝統・自然条件等をいかして質の高い暮らしを営むことのできる、持続可能な地域づくりを目指していくことが必要です。その際、まちづくりに当たっては、人口増加に伴う都市の拡大に合わせて基盤整備を行うという考え方から脱し、既存ストックの状況に合わせたコンパクトなまちづくりへと発想を転換することが不可欠です。また、それぞれの地域が、その地域独自の資源等をいかして活性化に取り組んでいくことが重要です。このような観点から、都市機能や居住の集約を誘導することにより、住宅、医療・福祉施設、商業施設等がまとまって立地し、住民が民間や行政の提供するサービスに容易にアクセスすることができる都市が、中長期的に形成されることが望まれます。このような都市のあり方は「コンパクトシティ」と呼ばれており、近年、全国の都市でコンパクトシティやこれに類する都市構造を目指す取組が見られています。

 また、地方分権の流れの中で、地域に根差した詳細な土地利用計画としての地区計画や景観法に基づく景観計画などを活用することによって、独自のまちづくりを推進することが可能になってきております。 さらに、医療・福祉・商業等の都市機能と居住を中心拠点や生活拠点等に誘導し、高齢者・子育て世代の生活環境の整備、財政面・経済面で持続可能な都市経営の実現など多角的な観点からコンパクトなまちづくりを推進することを目的として、2016年に改正都市再生特別措置法が施行されました。これにより、都市計画区域内において居住や都市機能を誘導すべき区域等について定める「立地適正化計画」を市町村が作成できることとなり、区域外における一定の開発行為等が届出・勧告の対象となり、都市機能や住宅の立地の緩やかなコントロールを図ることが可能となりました。

 このような観点から、ワークショップを中心として、人口減少社会に対応したまちづくり法制に関する研究を行うこととし、宮城県内を中心に、人口減少自治体の実態について、ヒアリングを中心とする調査を行い、これらの自治体が直面する問題点の整理を行うとともに、コンパクトシティの形成に必要とされるまちづくり法制の在り方に関する提言をまとめる予定です。本学での授業、演習、ワークショップなどにおいては、法学と経済学を結ぶ「法と経済学」の観点から、都市法の体系や都市環境政策を見直したり、地区計画、景観計画、立地適正化計画等をテコとした地域に根差した独自のまちづくりについての実地研究を通じて、新たな社会に必要となる現実的な政策の企画・立案能力の醸成に務めたいと思っております。皆さん、一緒に考えましょう。

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