公共政策大学院TOP > 概要 > ごあいさつ

概要

ごあいさつ

これからの社会を構想する

飯島 淳子
東北大学公共政策大学院院長
飯島 淳子

 「人口減少社会」や「地方消滅」といったこの国の構造的課題を考える余裕すらないほど、すべての人が生命・健康を脅かすリスクに向き合わされる状態が続いています。この現状のなかでそれでも、「私」は何をすべきか、「私たち」は何をすべきか、「みんな」は何をすべきかを考え、動くこと、そのためにとるべき方法を学ぶことは、公共政策大学院の存在意義の一つではないかと思います。

 東北大学公共政策大学院は、2004年の開設から17年目を迎えました。開設に向けた準備のなかで、諸外国における公共政策分野での高度職業人材の養成のあり方をも参考にしながら、政策の調査・提言を集団作業で行う公共政策ワークショップという教育方法に挑戦する決断をいたしました。ワークショップは、学生と教員による17年間の(そしてこれからも続く)試行錯誤の結晶であるとも言えます。

 毎年、4つのワークショップのチームごとに、仙台・宮城・東北の現場に密着しつつ、日本全体、そして世界を見据えながら、個別具体的に課題を抽出し、その解決に向け、実効性を備えた政策提言を行っています。中央省庁から派遣された実務家教員が自らの経験のなかで獲得してきたものを余すことなく伝えること、研究者教員もまた自らの専門分野に拠りつつ現場の生々しい課題と格闘すること、を通して、実務と理論の協働をわずかなりとも実現しえているのではないかと自負しています。

 東日本大震災から10年を経た今年度は、公共政策にとっても東北大学公共政策大学院にとっても、一つの節目の年に当たります。2つのワークショップがそれぞれのアプローチで防災をテーマとし、あのときから被災地に位置する大学として継続してきた営みをも振り返り、今後につなげていきます。残り2つのワークショップは、脱炭素地域づくり政策と「ニューノーマル」時代の地域政策をテーマとして選択しました。日常化する危機のなかでこれからの社会をどう構想していくかを考えるという点で、4つのワークショップは貫かれているように思います。

 この一年間、公共政策大学院でも小さなPDCAサイクルを実践し続けてきました。特に「現場主義」を掲げるワークショップでは、学生・教員ともに試行錯誤を重ね、オンラインでのヒアリングや報告会を含めて例年と変わらぬ成果を挙げることができました。この経験に基づく自信を胸に、今年度は、残された課題に取り組みつつ、東北大学公共政策大学院の未来を切り拓いていけるよう、ともに、そしてそれぞれに力を尽くしていきたいと思います。

▲このページの先頭へ