公共政策大学院20周年記念:院長挨拶|東北大学 公共政策大学院
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東北大学公共政策大学院創設20周年のご挨拶

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西岡 晋
(東北大学公共政策大学院院長)

 2022年4月より東北大学公共政策大学院院長を務めております、西岡晋と申します。この度、本大学院は創設20周年という節目を迎えることができました。これもひとえに、20年の長きにわたり本大学院の教育・研究・運営に多大なるご指導、お力添えを賜りました、関係各位のお陰でございます。これまでのご厚情に対しまして、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

公共政策学の来歴を辿りますと、さまざまな見解があるかと思いますが、私の専攻である政治学・行政学の観点からとらえた場合、アメリカの政治学者であるハロルド・ラスウェルが提起した「政策科学(Policy Sciences)」の構想にゆきあたります。ラスウェルは第二次大戦後、政策決定過程の解明と公共課題の解決に向けた合理的・科学的な判断材料の提供に資する学問として政策科学を構想しました。政策科学は民主主義の基盤として不可欠なものであるという認識のもとに、です。ラスウェルが蒔いた政策科学の種はその後アメリカで花開き、公共政策大学院の創設につながっていきます。

日本でも1990年代以降、「総合政策」や「政策科学」の名称を付した公共政策系の学部開設が相次ぎました。21世紀になってからは、2003年度に、研究者養成を主目的とした従来の研究大学院とは異なり、高度専門職業人の養成を主目的とし、実践性を重視する専門職大学院制度が開始され、本学も含め、専門職大学院の一種としての公共政策大学院が続々と開設されました。

今では、アメリカのみならず、日本を含め、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカなどの各地域・各国に公共政策のプログラムや大学院が設置されています。公共政策学及びその教育プログラムの広がりは世界大のものです。紛争、暴力、貧困、差別、感染症、気候変動、人口構造変化等々、さまざまな問題が生起するなか、それらの課題の分析と解決案を提示するための公共政策学の重要性が世界中で高まっていることを示しています。

本大学院はこうした公共政策学の国際的潮流を踏まえつつ、実務家教員と研究者教員との協働を重視し、独創的で実践的なカリキュラムを作ってまいりました。ワークショップを中核とする独自の教育プログラムを設け、現場での調査・分析に軸足を置き、実現性の高い政策提言を行うことを通して、学生の実践力の養成に力を注いできたことが、何よりの特徴です(詳しくは本大学院ウェブサイト上のパンフレットをご覧ください)。その姿勢は20年間些かもぶれることなく、一貫しています。本大学院で習得した分析力や実務的能力は公務職場のみならず、近年パーパス経営や社会的貢献が求められる民間企業、NPOやNGOといった市民社会組織等、多くの場で通用するものと自負しています。

現在法制度上の成人年齢は18歳ですが、少し前までは20歳でした。本大学院は2004年4月に開設され、この度、皆様のお陰をもちまして無事、成人式を迎えることができました。成人になった本大学院は、時代の変化に順応しつつも、現場重視の基本理念は変えることなく、これまで以上に教育・研究活動に励んでまいります。今後とも、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。


 

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