橋本純次(はしもと じゅんじ)様
10期生(2013年4月〜2015年3月)
社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科 研究科長代行・准教授
東北大学公共政策大学院20周年,誠におめでとうございます。2013年度入学(10期)の橋本と申します。修了後,青葉山の情報科学研究科に進学したのちメディア系の学者になりまして,現在は東京の社会人向け専門職大学院に勤務しています。1年次はワークショップD(宍戸邦久先生・飯島淳子先生)で地方自治を学び,2年次のリサーチ・ペーパーは「どうすれば地域の実情を放送政策に反映できるか」という内容で書きました。最近では自治体等の外部委員としてお声がけいただく機会もあり,当時の教科書やノートがたいへん役立っています。
在学中の2年間で最も印象に残っていることのひとつは,ある同期が「法曹は事件が起きた後に活躍するが,公共政策はその前に社会に関与できる(だから公共政策大学院への進学を決めた)」と言っていたことです。わたしがボンヤリ考えていたことを見事に言語化していて感心したのをよく覚えています。東日本大震災やその後の自然災害,最近ではCOVID-19の経験からも,このことの重要性は明らかです。
みなさまにとっては釈迦に説法とは存じますが,公共政策の役割のひとつが「平時に社会を整える」ことだとするならば,それに取り組む専門家に求められる能力は,「データに基づいて社会現象の実相を正確に捉える技術」や「社会のあり方を考えるための想像力」,さらには「理想とする社会像を他者に納得してもらうためのコミュニケーションデザイン能力」など,多岐にわたります。「東北大公共」のよいところは,長期的なワークショップや研究活動を通じてこうした思想と技術を総体的に修得できることだと確信しています。
さらにこれらは,公共セクターのみならず民間企業や学術界,ひいては日常生活も含め,あらゆる場面で応用可能な「ポータブルスキル」でもあります。修了生がきわめて多様な領域で活躍していることはこのことの証左といえるでしょう。わたし自身も,いつか他の修了生と一緒に仕事をする機会を楽しみにしています。
ところで,大学教員になってみて分かったのですが,東北大公共のカリキュラムは一般的な高等教育機関と比べて(おそらく院生・修了生のみなさまが想像するより)はるかに大きなコストがかかっています。これを維持する教職員のみなさまへのご負担は途方もないと存じますが,国内において最先端のPBL型公共政策教育に取り組む教育機関として,今後も優秀な人材を輩出し続けていただければ幸いです。
末筆ながら,大学院のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。