坪原 和洋先生(2021年~2023年在籍)
国土交通省鉄道局総務課危機管理室長
東北大学公共政策大学院創設20周年のお祝いと学生の皆さんへのエール
この度、東北大学公共政策大学院創設20周年を迎えること、心よりお祝いを申し上げます。
私は2021年から2023年までの2年間、警察庁から出向し、実務家教員としてお世話になりました。ワークショップや講義を通じてご一緒した日々が、まるで昨日のことのように鮮明に思い出されます。当初は新型コロナウイルス対策による行動の制限もありましたが、徐々に制限が緩和されていく中、様々な試行錯誤を重ねながら皆様と一緒に「学び」の形を創り上げていったことはかけがえのない経験となりました。
特に忘れがたいのは、公共政策ワークショップの主担当をさせていただき、副担当の先生や学生の皆さんと共にフィールドワークをしながら、「経済安全保障」という当時も現在も政府の重要施策として現在進行形の課題に取り組み、学生の皆さんが素晴らしい報告書を仕上げる場面に立ち会えたことです。
自分語りとなりますが、恥ずかしながら私の学部学生時代は生活費を工面するためのアルバイトに明け暮れ、ただ卒業単位を揃えることで精一杯、大学院への進学など考えたこともないという体たらくで、公共政策大学院の学生の皆さんにそのような私が何を提供することができるのか最初はまるで思いつかない有り様でした。
しかし、大学院に赴任すると、公務を志すべく努力する学生、キャリアのスキルアップ、さらなる公益活動を行うための基礎作り等の様々な目的を持って意識高く努力される学生を目の当たりとし、恥ずかしい姿を見せるわけにはいかないと先輩の実務家教員や研究者教員のご指導をいただきながら、必死に学生と一緒に学んでいくのだという姿勢で過ごさせていただくとともに、公務に従事してきた中で身につけたものを少しでも皆さんにお渡しできればと考え続ける日々が始まりました。「先生」というよりは、むしろ一緒に学ばせていただいたというのが偽りのない実感であります。実際、私も学生に戻った気分で他の研究者教員の先生の講義を聴講させていただいたり、研究者教員の方と様々なお話をする中で実務と研究が公共政策の両輪であることを学ばせていただきました。なお、ワークショップの豪州での海外調査の際の小咄ではありますが、ヒアリングの相手先に社会人学生が教授、私が学生と勘違いされたことがあり、姿勢というものは見た目にも影響するのかなとお互いに笑ったというエピソードもありました。
そのようにまったくもって頼りない話ではありますが、自転車操業のように様々な新しい学びをさせていただきつつも、そこに過去の警察庁や地方自治体知事部局等における勤務から得た実務経験の味付けをさせていただきまして、公共に奉仕する国家公務員という職業の魅力を伝えることができるように心がけて2年間はあっという間に過ぎていきました。ワークショップや講義で数多くの学生の皆さんとお話させていただきましたが、それが学生の皆さんが新たな一歩を踏み出すお力に少しでもなれていたのであればこれに勝る喜びはありません。
現在、私は霞が関に戻り、国土交通省鉄道局で危機管理業務に従事しているところですが、公共政策ワークショップで学生の皆さんと一緒に試行錯誤した経験がまさに実務に直結していることに気づかされることが多くあり、その教育効果に驚いています。また、中央省庁を含めて至るところに卒業生の方々が勤務され、一年目からそれぞれにご活躍されている姿を拝見し、東北大学公共政策大学院のワークショップを中心とした教育の素晴らしさを強く実感しております。
現在、在籍する皆さんは、それぞれの目標に向かって日々努力を続けていることと思います。その努力は必ず実を結ぶものであると私は確信しておりますし、それをまさに「公共」のフィールドで実現している先輩方が多数おります。ワークショップや講義を受けながら、ともすれば本当に目標に近づいているのか迷っている方もいるかもしれませんが、先生や仲間とゆっくりと着実に進んでいけば必ず目標に近づいていきますので、体調を崩すほどの無理はしない範囲で引き続き頑張ってください。
皆さんが他にはない特色を持った東北大学公共政策大学院での多様な研究者教員、実務家教員、学生との交流や学びを通じて、自らの可能性を大きく広げ、ともすると当初の目標よりもさらに向こう側までも進んでいくことを祈念しております。
最後に、創設20周年という節目を迎えた東北大学公共政策大学院が、今後もさらなる発展を遂げ、優れた政策提言や人材をさらに輩出し続けることを心より願い、エールを送らせていただきます。ぜひこれからも「公共」のため共に頑張っていきましょう。お待ちしております。