黒﨑聡史(くろさき さとし)様
15 期生(2018 年 4 月~2021 年 3 月)
明治安田総合研究所研究員・成城学園評議員
東北大学の公共的大学院であることを願って
東北大学公共政策大学院(法学研究科公共法政策専攻)創設20周年を祝し、記念イベントの御盛会を祈りあげます。入学定員が30名であることから単純計算をすると、実に、約600名近い卒業生を抱える大学院になられた由、心からお喜び申し上げます。学校という存在は、多くの卒業生の心のなかに、末永く残り続けるものでしょう。
かくいう私は、4年間の実務体験(人事・経理業務)を経て大学院へ入学した者です。大学院での学びを経ることで、企画・調査業務、研究・開発業務と、制度の運用から立案過程へ幅を広げることができました。更にこの頃は、外向きかつ第三者的に意見を述べることに「開眼」してか、コンサルティング業務に関心を抱きつつあります。
若林啓史先生(外務省)のワークショップでは、中国・北京での現地調査が特に思い出される一方、ヒアリング記録の客観性をいかに担保するのかも学びました。伏見岳人先生(日本政治外交史)のゼミでは、歴史的施設に足を運びながら、忘れ去られた歴史を掘り起こすことを学びました。桑村裕美子先生(労働法)のリサーチ・ペーパーでは、現行法制度の調査手法と、法律論に沿ってまっとうであることを学びました。
ところで、『公共性』の著者である齋藤純一先生(早稲田大学・政治理論)の言説を少し引けば、社会には、内部の論理に従う「合理性」と、人の道に適った「道理性」の相克により判断せねばならない場面があるようです。いずれの理性にしても、他者を「私的」に見棄てることなく、外部の視点を「公共的」に取り入れることが期待されます。
つきましては、今後ますます、東北大学にあって、制度的議論を公共的に行う大学院であることを、切に願っております。ふと思い返せば、この『公共性』という本も、大学院での「財政学」という授業で紹介されたものですし、「門戸開放」はまさしく、東北大学における、理念のひとつかと思います。この度は、誠におめでとうございます。

ワークショップでの縁は現在も続いております(2024年5月@東京・四ッ谷)
以上