橋本敬史先生(2019年~2021年 厚生労働省より)
国民年金基金連合会 審議役
東北大学公共政策大学院の思い出と20周年に寄せて
東北大学公共政策大学院が創設20周年を迎えられましたことを心よりお慶び申し上げます。
本大学院の特長は、何と言っても、研究者教員と実務家教員が協働して学生を身近な距離で指導する「公共政策ワークショップ」(WSⅠ)です。しかしながら、私が在職した2年間は、まさに新型コロナウイルスとの闘いでした。2020年の春は第1波の真っ只中で、キャンパスが立入禁止となったため、WSⅠはオンラインでスタートしました。その後、対面は可能となったもののWS室は使用できず、講義室で感染症防止対策を施しながら、学生たちは発表や討論を重ねました。WS本来の膝を突き合せた議論と言うには程遠い状況でしたが、現地調査先の多大なご協力の下でヒアリングを行い、対面・オンラインのハイブリッドで報告会のパワポ資料を作り、最終報告書を無事に取りまとめることができました。学生たちの一致団結した頑張りは勿論ですが、当時院長の飯島淳子先生はじめ研究者教員の先生方のご指導と、同時期に在職していた実務家教員の皆さんの激励のおかげであり、改めて感謝申し上げます。
本大学院の学生は、学部時代に就活を失敗、公務員試験を浪人中、勤務先を一時休職、逆に仕事や団体活動を継続中など各々事情があり、本大学院に求めるものも異なっています。そうした中、研究者教員の先生方が公共政策に関する論理的な思考の方法を体系的に指導される一方で、実務家教員は実際に政策の企画・立案に携わってきた者として、私自身、学生に何を伝えればよいのかを模索し続ける毎日でした。結局私は、医療・介護・福祉分野におけるこれまでの経験や、国の行政機関、特に厚生労働省という役所や国家公務員という職業の魅力を惜しみなく話そうと思い、WSⅠのみならず講義や演習、リサーチ・ペーパーの指導や進路指導ではそのことを第一に心がけました。学生の皆さんが新たな未来への一歩を踏み出すに当たり、少しでもお役に立てたのであれば光栄に存じます。
最後になりますが、様々な背景を持つ学生と教員が集まり、現代社会の諸情勢を俯瞰しながら、それぞれの知恵や経験を投入して新たな政策の案を作り出し、東北地方のみならず、国や全国の自治体、民間企業に発信・還元していく。東北大学公共政策大学院におかれましては、こうした「公共政策のプラットフォーム」としての機能を今後も発揮し続け、現在そして将来の学生の皆さんが活躍される礎となりますことを切に希望してやみません。