度山徹先生
東北大学公共政策大学院の創設20周年おめでとうございます。同時に、この節目の年に、当院の最も重要な学びである公共政策ワークショップを担当していることの責任をひしひしと感じております。
私が大学を卒業した頃には、まだ全国どこにも公共政策大学院のような学びの場がありませんでした。もう少し勉強したかったのにという思いを引きずりながら行政を仕事として選択した私は、若い頃から、制度がこうなっているというだけでは納得せず、いかなる必要性や社会背景のもとでこの制度が形作られたのか、制度が果たしている役割や意味は何か、他の国ではどうなっているのか、研究の領域ではこれまでどのような議論がなされ議論の到達点はどこにあるのか、など調べて、自分の中で納得ができなければ仕事ができないという性格で、一緒に仕事をした上司や部下にはかなり厄介な存在であったと思います。
いつの頃からか、こうして考えてきたことを次の世代の方々に伝えたいと考えるようになり、役所の中でずっと言い続けて、昨年ようやくそうしたチャンスをいただくことができました。実務家教員として受け入れていただいた先生方と学生さんに支えられ、とても充実した時間を送ることができております。
4月のワークショップのスタート前は自分自身とても不安が大きかったのですが、政策に関係する資料や文献などの材料をメンバーはどんどん吸収していき、1か月も経たないうちに、自分たちで議論をどんどん進めていくようになりました。ワークショップで展開される議論を聞きながら、メンバーの学ぶ意欲と問題意識の高さに驚くとともに、若い世代の意識や直面している課題などを肌で感じることができるのも、私にとって大きな学びとなっています。
ここまで成熟した社会の中で、簡単に解決できる問題なんて何一つありません。日本社会は基本的にOJT重視の考え方が強いですが、霞が関も大企業も制度疲労を起こしています。こうした困難な状況と課題に直面するこれからの世代にとって、学部は卒業するけれどもう少し学んで社会に出たい、あるいは、社会に出たけどもう一度学びたいと考える方々にとっての主体的な学びの場の必要性はますます大きくなるでしょう。そうした期待と必要性に応えていけるよう、東北大学公共政策大学院の発展を心より願うとともに、現在担当しているワークショップを実りあるものにできるよう、メンバーとともに精一杯努力したいと考えます。
先日の「20周年の集い」には、20年間の学びの場をつくりあげてきた、たくさんの修了生の皆さん、歴代の教員の皆さんにお集まりいただき誠にありがとうございました。ワークショップのメンバーも、大変参考になるアドバイスをいただいたり、ヒアリングへのご協力をいただけたりと、とても感激しておりました。引き続き公共政策大学院での学びに、様々な形でご支援を賜れば幸いに存じます。