東北大学公共政策大学院入学試験第2期募集
小論文問題及び出題趣旨(2026年1月17日実施)
次の4題のうちから1題を選んで論じなさい
【内政関係】
1.
全国の地方自治体(以下「自治体」という。)の職員構成をみると、今後、自治体の人材不足が深刻化することが見込まれる。
その一方で、近年の自治体では、人口減少に対処するための業務が増えている。さらに、社会経済情勢の変化に伴い自治体行政に期待される役割も多様化・複雑化し、市町村を中心に業務は増大の一途をたどっている。
このように自治体の行政サービスへのニーズが変化し、増大する中、全国の自治体は人的にも財政的にも限られた経営資源で対応することを余儀なくされているところ、前述のとおり人材確保は今後さらに困難になることが予想され、持続可能な自治体行政運営のあり方が問われていることから、特に規模の小さな市町村を中心にその見直しは急務であると考えられる。
そこで、深刻化する自治体の人材不足に対応し、自治体行政運営のあり方を持続可能なものにするための対応策として考えられる「具体的方策」と「留意すべき事項」について、①業務を減らす、②他の市町村や都道府県と業務をまとめる、③担い手を広げる、④生産性を高めるの4つの観点のうち、いずれか1つ又は複数に立脚してあなたの考えを述べなさい。
| <出題趣旨>
本問は、地方自治体(以下「自治体」という。)の行政サービスへのニーズが変化し、増大する中、人口減少時代において深刻化する自治体の人材不足に対応し、自治体行政運営のあり方を持続可能なものにするための対応策として考えられる「具体的方策」と「留意すべき事項」について、①業務を減らす、②他の市町村や都道府県と業務をまとめる、③担い手を広げる、④生産性を高めるの4つの観点のうち、いずれか1つ又は複数に立脚して自らの考えを述べさせるものである。 |
2.
生物多様性の損失は気候変動とともに、人類が直面する重大な危機となっており、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」の実現が国際的課題となっている。こうした中、我が国では「生物多様性国家戦略2023-2030」に基づき、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的な保全を目指す「30by30」などの取組を進めている。
生物多様性の損失は、単に環境保全上の問題にとどまらず、社会経済活動そのものの存続に関わる問題となっている。
このような背景を踏まえ、以下の問いに答えなさい。
(1)多様な生態系がもたらす恵み(生態系サービス)にはどのようなものがあり、その持続的活用のためにはどのような考え方を基本とすることが重要か。また、我が国の生態系にはどのような危機が生じているかについて述べなさい。
(2)(1)の状況の下で、ネイチャーポジティブの実現に向けてどのような政策・施策を重点的に推進していくべきか、理由とともに具体例を挙げて、あなたの考えを述べなさい。
| <出題趣旨>
本問は、ネイチャーポジティブという国際的な潮流を踏まえ、社会経済活動の中に生物多様性を組み込んでいくための具体的な政策や施策を構想・提案できるかを問うものである。生態系サービスをフローとして持続的に利用するためには、ストックとしての自然資本の回復力の範囲内で活用していくことが基本となる。その上で、生物多様性の保全と活用の好循環を、企業活動や地域課題と一体的に実現する取組について、基本的知識及び論理的思考の下で展開できているかを評価対象とした。 |
【経済関係】
3.
先進諸国においては、1980年代から2010年頃にかけて格差が拡大し、それ以降今日まで目立った改善はみられていない(【図】OECD諸国の等価可処分所得のジニ係数(OECD平均)の推移を参照。)。このような格差の拡大は、経済成長にどのような影響を与えると考えられるか、格差の拡大が社会経済にもたらす影響やそれに対する政策的対応と経済成長との関係を明らかにしつつ、あなたの考えを述べなさい。
【図】OECD諸国の等価可処分所得のジニ係数(OECD平均)の推移

(注)1980年代半ば、1990年代半ば及び2000年頃は20か国、2000年代半ばは30か国、2010年は34か国、2016年及び2021年は36か国の平均値
出典:OECD(2024)Society at a Glance 2024などから作成
| <出題趣旨>
本問は、世界的にも、また我が国においても意識されるようになって久しい格差の拡大の問題について、それが経済成長にどのような影響を与えるかについて、論理的な考察力を問うものである。 |
【国際関係】
4.
我が国の政府開発援助(ODA)は、戦後間もない1954年のコロンボ・プランへの加盟によるアジア諸国への技術協力を契機に開始され、高度成長期を経て現在に至るまで、開発途上地域の発展を支援する重要な外交政策となっている。非軍事的協力を基本とする我が国のODAは、平和で安定した国際社会の構築に寄与するとともに、日本と世界双方にとって良好な国際環境を創出し、我が国の国益の実現にも大きく貢献している。
近年、気候変動、紛争、感染症など、国境を越える複合的危機によるグローバルな課題が深刻化しており、こうした課題の解決に向け、我が国のODAが果たすべき役割に対する国際社会の期待は一層高まっている。一方で、一般会計におけるODA予算は1997年度のピーク(1兆1,687億円)から半減、近年は横ばい傾向となっている(2025年度5,664億円)。また、我が国は、ODA総額では経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)加盟国中、2024年実績で4位であるが、国民1人当たりの負担額(図表1)は他の多くの先進国に比べて低い水準にある。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット17.2では、「先進国は開発途上国に対するODAをGNI比0.7%にする」ことが掲げられているが、我が国はその目標に未だ達していない(2024年のODA実績(暫定値)は対GNI比で0.39%)。
日本国内の社会経済情勢を顧みると、物価高などの経済状況、少子高齢化、政府の財政制約に加え、近年は排外主義的な言説や外国人受入に対する社会的抵抗感、制度への批判も顕在化しており、ODAを含む国際協力への見方は厳しさを増している。
「外交に関する世論調査」における直近10年の推移を見ても、国民の国際協力への関心は低下傾向となっている(図表2)。こうした世論の変容を受け、国際協力のあり方や、ODAの予算規模及びその役割が改めて問い直されている。
上述のODAの意義や役割、国際社会や国内世論の動向を踏まえ、「将来のODA予算の方向性」及び「国民の理解や支持を得られるODAのあり方」について、あなたの考えを述べなさい。
【図表1】
DACメンバー(EU除く)における政府開発援助実績の国民1人当たりの負担額(2023年)(単位:ドル)

出典:「OECD/DACにおけるODA実績」(外務省)
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki.html)(2026年1月6日閲覧)
【図表2】
外交に関する世論調査(今後の開発協力のあり方)

出典:「外交に関する世論調査(令和6年10月調査)」(内閣府)

出典:「外交に関する世論調査(平成26年10月調査)」(内閣府)
| <出題趣旨>
政府開発援助(ODA)の意義と制約を踏まえ、国際協力の量・質の設計に関する判断力・構想力を問う。世界情勢(気候変動・紛争・感染症など)と国内の財政・世論動向に基づき、将来のODAのあり方(優先順位、制度改善など)を国民の理解と支持を得られる形で論理的に示し、ODA予算の方向性について公共政策としての実効性を伴う提言力を評価する。 |