東北大学公共政策大学院入学試験第1期募集
小論文問題(令和4年9月29日―9月30日実施)
次の4題のうちから1題を選んで論じなさい。
【内政関係】
1.デジタル技術の進展を背景に、その活用によって地域の個性を活かしながら地方の社会課題の解決、魅力向上のブレークスルーを実現し、地方活性化を加速するものとして、「デジタル田園都市国家構想」の基本方針が去る6月7日に閣議決定された。
情報通信を活用して利便性の高い社会づくりを目指す政府としての取り組みは、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目標に掲げたe-Japan戦略(2001年1月)以来累次に渡って行われてきたが、国際的に見ると全体として大幅に遅れているとの評価があり、新型コロナウイルス感染症への対応に関して行政のデジタル化の遅れが指摘されたところでもある。
以上を踏まえ、デジタル田園都市国家構想がより効果的に成果を上げるために克服すべき課題及びそのために力点をおくべき政策について、同構想の下では長年の課題である地方活性化も期待されていることも踏まえながらあなたの考えを述べなさい。
2.世界第8位(2019年)の規模を誇る農林水産生産額(生産力)と、世界を魅了する高品質な農産物の生産技術を活かして、近年、国においては、農林水産物・食品の輸出促進政策に力を入れている。
農産物等の輸出に関しては、2021年に初めて輸出額が1兆円を超えるなど、年々輸出実績が伸びているが、政府が目標としている輸出額(2025年に2兆円、2030年に5兆円)を達成し、農林水産業を魅力ある産業に発展させるためにも、また、1次産業以外に主たる産業のない地域の地方創生を実現するためにも、更なる輸出促進の各種取り組みが求められている。
このような背景の下、農産物等の輸出拡大に取り組むためには、どのような政策が求められるか、あなたの考えを述べなさい。回答にあたっては、あなたの注目する日本の地域を一つ選び、どのような克服すべき課題が現場にあるか、また、その政策を効果あるものとするにはどのような点を制度設計する上で考慮すべきかを述べなさい。
【経済関係】
3.内閣府によれば、「我が国は人口減少社会を迎え、これからのまちづくりは『つくること』から『育てること』へシフトしていく必要があると言われて」おり、「そのような中、全国各地で幅広い多様な主体が一体となって、地域の価値を高める様々な活動」が行われている。「そうしたまちづくり活動は『エリアマネジメント』と呼ばれ、注目されてい」る(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局/内閣府地方創生推進事務局『地方創生まちづくり―エリアマネジメントー』(2017年))。
エリアマネジメントとは、国土交通省によれば、「地域における良好な環境や地域の価値を向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」とされる(国土交通省土地・水資源局土地政策課『エリアマネジメント推進マニュアル』(2008年))。
エリアマネジメント活動やその担い手であるエリアマネジメント団体に対しては、近年、国や地方自治体により、補助金や出資等の財政的支援、公共空間の使用等の規制緩和・特例の適用、都市再生推進法人のような法令に基づく位置づけの付与、公共施設の指定管理や業務委託における特別の扱い、人材の派遣等といった支援措置が行われる例が少なくない。
エリアマネジメント団体のような民間主体によるエリアマネジメント活動のような公民の中間的な活動に対する上述のような公共主体による支援は、経済学的視点からどのように説明できるか、このような活動の具体例を挙げつつ、あなたの考えを述べなさい。
【国際関係】
4.気候変動は気候危機とも呼ばれ、日本のみならず世界全体の喫緊の課題となっている。その対応の国際的な背景、経緯、枠組み、動向にもそれぞれ触れた上で、日本政府として今後どのように国際的に協力・貢献・対応していくべきかについて、理由も含めあなたの考えを述べなさい。