東北大学公共政策大学院入学試験第1期募集
小論文問題(令和5年9月30日実施)
次の4題のうちから1題を選んで論じなさい。
【内政関係】
1.本年は4年に一度の統一地方選挙が4月に行われたが、地方選挙に限らずかねてから凋落傾向にあった投票率については概して今回もその流れがとまらず、指定都市及び都道府県議会議員選挙に至っては42%弱に落ち込んだほか、町村では首長選挙、議会議員選挙双方で下落が顕著であった(注)。中でも近年の選挙ではとりわけ20代の低投票率が目立っている。
また、全国41道府県で行われた議会議員選挙において、定数の1/4に及ぶ565人(25%)が無投票により当選することとなったほか、より深刻な問題として認識されてきた地方の町村議会におけるなり手不足問題については、今回の統一地方選挙で選挙を実施した全国の町村の約1/3の123団体で無投票となり、そのうち定員割れが4年前の前回は8団体9人だったところ、各地で種々努力が続けられているにもかかわらず、今回は20団体22人と状況が激しく悪化している。
若年世代を中心とした低投票率や町村の議員のなり手不足のこうした現状について、地域社会の運営上どのように認識しているか述べたうえ、状況を変えるためにどのようなことを行うべきか、あなたの考えを述べなさい。
(注)2019年4月の統一地方選挙との比較で、首長選挙が△4.32ポイントの60.79%、議会議員選挙は△4.20ポイントの55.49%。
2.我が国では、近年様々な災害が頻発しており、各地で甚大な被害が発生している。
災害対策基本法2条1号によれば、災害とは、「……異常な自然現象又は……これらに類する……原因により生ずる被害をいう」(傍点出題者)。また、災害(被害)の大きさは、外的要因である「ハザード(Hazard)」、社会的要因である「脆弱性(Vulnerability)」及び「曝露(Exposure)」という3つの要素によって決まると言われている。
防災・減災対策の推進のため、災害の原因となる特定の異常な自然現象又はそれに類する原因を一つ挙げ、その原因から引き起こされる災害(被害)を軽減するために必要な施策について、ハザード対策、脆弱性対策及び曝露対策の3つに分けてあなたの考えを述べなさい。
(注)ハザード、脆弱性及び曝露とは、それぞれ以下の通りとする。
ハザード:人命や財産等へ悪影響を与え得る物理現象やその大きさ
脆弱性:ハザードに対する悪影響の受け易さ(感受性)や適応・対応能力等
曝露:悪影響を受ける場所や状況に人や財産等が存在すること
【経済関係】
3.我が国の農業は、世界第8位(2019年現在)の生産額を誇るだけでなく、和牛、シャインマスカットなど、世界を魅了する高品質の農産物を生産する技術を有し、輸出額も年々増加するなど、魅力ある産業に発展する可能性を秘めているが、担い手の高齢化、農地面積の減少や荒廃農地の増大など難しい課題を抱えている。
また、国内には、農業以外に主たる産業のない地域も多く、地方創生を実現する上でも、農業・農村の振興は国・地域の重要な政策課題となっている。
あなたの故郷など、あなたの注目する地域を一つ選び、どのような克服すべき課題が現場にあるのか、また、その政策を効果あるものとするにはどのような点を考慮すべきかを考察しながら、その地域の農業を振興して、我が国の地方創生を実現するために、どのような政策を立案・展開すべきか、あなたの考えを述べなさい。
【国際関係】
4.多様な生物は、人間の生活・生存の基盤となる様々な恵み(生態系サービス)をもたらしているが、人間活動等による生物多様性の損失が世界的に危惧されており、気候変動とともに、地球環境の危機として、日本のみならず世界全体の喫緊の課題となっている。生物多様性の保全に関し、国際的な背景、経緯、動向にもそれぞれ触れた上で、日本政府としてどのように国際的に協力・貢献・対応していくべきか、理由も含め、あなたの考えを述べなさい。