東北大学公共政策    

2025年4月入学用(第1期募集)試験問題(小論文問題)及び出題趣旨

東北大学公共政策大学院入学試験第1期募集
小論文問題及び出題趣旨(令和6年9月28日実施)

次の4題のうちから1題を選んで論じなさい。

【内政関係】

1.

東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の区域をいう。)への人口の過度の集中(以下「東京圏への一極集中」という。)を是正することは、我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応して人口の減少に歯止めをかけることとともに、地方創生における大きな目的として、2014年に制定・施行された「まち・ひと・しごと創生法」に掲げられ、国を挙げてそのための取組が進められてきた。しかしながら、【図表1】の折れ線グラフでも明らかなとおり、東京圏への一極集中の大きな流れを変えるには至っておらず、東京圏以外の地方の人口動向は依然として厳しい状況にある。

ところで、東京圏への一極集中を政策課題として考えるに当たっては、まずは「誰が」「どのタイミング」で地方から東京圏へ転入し、地方へ戻らずに東京圏に住み続けているのかを把握することが必要である。そこで、【図表1】【図表2】から読み取れることを述べた上で、それを踏まえつつ【図表3】から読み取れることも加味して、東京圏への一極集中を是正するのに効果的な政策について、それが効果的であると考える理由も含めてあなたの考えを述べなさい。

※【図表1】【図表2】において、「東京圏の転入超過数」とは「東京圏への転入者数-東京圏からの転出者数」のことである。


【図表1】東京圏の転入超過数(2010年-2023年、年齢階級別)


資料:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(日本人移動者)を基に作成


【図表2】人口移動の状況(東京圏・男女別)

資料:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(日本人移動者)を基に作成


【図表3】生まれ育った地域(地元)を離れた理由(就職)

地元を離れて東京圏で就職した理由

資料:内閣府「地域の経済2020-2021」により作成

(出典)内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局(2024)「地方創生10年の取組と今後の推進方向 参考資料集」


<出題趣旨>

本問は、東京圏への人口の過度の集中(以下「東京圏への一極集中」という。)を政策課題として取り上げ、①「誰が」「どのタイミング」で地方から東京圏へ転入し、地方へ戻らずに東京圏に住み続けているのかを把握するため、国の関係府省の地方創生担当部局が作成した文書の参考資料中の図表から読み取れることを記述させた上で、②当該記述を踏まえつつ、別の図表から読み取れることも加味して、東京圏への一極集中を是正するのに効果的な政策について、それが効果的であると考える理由も含めて自らの考えを述べさせるものである。

 

2.

我が国の食料安全保障を取り巻く状況が変化する中、将来にわたって国民に食料を安定的に供給していくためには、食料自給率を向上させていくことが必要であるが、国内の食料消費に対する国内精算の割合を示す指標である食料自給率は長期的に低下傾向で推移しており、その水準もカロリーベースで38%(2023年度)とG7諸国の中で最低水準となっている。食料自給率が長期的に低下傾向で推移している原因を説明した上で、食料自給率を向上させるためには、どのような政策が求められるか、あなたの考えを述べなさい。

 

<出題趣旨>

世界的な食料情勢の変化に伴う食料安定供給リスクの高まりなどを受け、政府は食料・農業・農村基本法を改正するなど食料安全保障政策の強化を進めているところである。食料安全保障に対する世の中の関心が高まる中、食料安全保障の代表的な指標である食料自給率に対する理解力、食料自給率が長期的に低下傾向で推移している要因についての分析力、政策提言に至る論理的思考力を問うものである。

 

【経済関係】

3.

主要先進国における男女の賃金格差の状況をみると、我が国はOECD加盟国平均(11.4%)の倍近い水準(21.3%)となっており、G7諸国の中で最も格差が大きくなっている。

男女の賃金格差が生ずるメカニズムに言及しつつ、我が国においてなぜこれほど大きな格差が生じているのか、また、この解消に向けてどのような取組が必要となるかについて、あなたの考えを述べなさい。

 

※OECD“Gender wage gap”による2022年のデータより。フルタイム労働者について、男性の賃金の中央値と女性の賃金の中央値の差を算出したもの。

 

<出題趣旨>

労働経済学からの出題。先進国の中でも我が国は男女間の賃金格差が特に大きいが、経済の低成長の一つの背景として、また、未婚率の上昇やシングルマザーの高貧困率の要因として、さらに、地方部から都市部への人口流出の原因として、この問題がクローズアップされている。生産年齢人口の減少に伴い、人手不足が年々深刻になる中、我が国経済を考える上で重要な問題となっているジェンダー・ギャップについての理解と考察力を問うものである。

 

【国際関係】

4.

国際司法裁判所(ICJ)は、国連の主要な司法機関である。同裁判所の任務、2つの役割、管轄権、限界を説明するとともに、「法の支配」をあなたなりに説明して、日本政府がその推進に貢献し得る方法について、あなたの考えを述べなさい。

 

<出題趣旨>

国際司法裁判所(ICJ)は、国際法に基づく裁判で国家間の紛争を平和的に解決することを任務として設置された、国連の主要な司法機関である。本問は、同裁判所に関する国際法上の基礎的な知識を問うた上で、日本の外交政策の柱の一つである「法の支配」の推進について、解答者なりの理解を整理し、論理的に説明するとともに、我が国が取り得る方法について、実行可能な政策を分かりやすく提示することができるかを問うものである。

 

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