専攻科目
競争法・競争政策
略歴
2010年11月に赴任しました。公正取引委員会出身の実務家教員です。再販売価格維持制度、下請法、持株会社、電気通信等の経済規制、独占禁止法違反事件の審査(犯則調査を含む)・審判、審査手続等に関する業務に携わってきました。大蔵省出向時には、国債の非居住者非課税制度の検討等に参加しています。
公共政策大学院での授業に当たって
2010年度は、公共政策ワークショップⅠプロジェクトB「消費者・生活者の視点に立った安心・安全な取引・ものづくりに向けた施策」を担当しました。消費生活相談件数が高止まりし、潜在的な消費者被害も少なくないとみられる中、国の政策においては消費者庁の創設など消費者重視の方向への転換が図られていますが、地方の消費生活相談の現場では、予算・人員の不足など様々な問題を抱えています。このような状況の下、多数のヒアリング、有識者との意見交換、シンポジウムへの参加、日本消費経済新聞との共同アンケートの実施等を経て、地方の相談対応体制を充実させる施策(広域連合の設立、消費者安全法の改正、地方消費者行政指針の策定等)、適格消費者団体制度の実効性を高める施策及び訪問販売等の行為規制に関する施策を提言しました。特に地方消費者行政の在り方については、同時期に政府の地方消費者行政専門調査会で議論が進められており、また、当プロジェクトの提言案に対し自治体等の関係者においても賛否両論がみられたところ、教員・学生ともに、政策を提言し実現することの難しさや責任の重さ、関係者の意見を幅広く聞いて提言をブラッシュアップすることの大切さなどを体感する貴重な機会を得られたものと思っています。
2011年度前期は、「政策体系論 政策実務A 競争政策」と「適正手続論」の授業を担当しました。前者においては、電力規制、タクシー規制、医薬品のネット販売規制等を採り上げ、望ましい規制の在り方はどのようなものか、震災を経た現在加えるべき視点は何かといった点の検討を試みました。後者においては、独占禁止法違反事件の審査手続の実務を紹介し、欧米の状況や取調べの可視化の議論も踏まえ、被疑者の防御権の保障と真相解明機能の確保のバランスをどのように図るべきかの検討を行いました。いずれの授業においても、学生との対話・議論を重視することを心がけましたが、学生の意見により新たな検討の展開が得られるなど、私自身が教えられることも一、二ではありませんでした。
2011年度後期は、「地域社会と公共政策論Ⅳ」の授業を担当しました。公共調達・PFI、企業誘致等の場面を採り上げ、地元経済振興・地元企業優遇といった地方自治体の政策と競争政策の調和を如何に図るべきかをテーマとして議論を行いました。宮城県の各部局の方を外部講師としてお招きして実情をお伺いするとともに、国家補助規制の議論も参考にするなどして、バランスの取れた考察となるよう心がけたところです。
2012年度は、公共政策ワークショップⅠプロジェクトB「消費者市民社会の実現に向けた施策について」を担当し、再び、6名の学生と消費者政策の課題と向かうべき方向を議論しています。震災後に多発した消費者被害は、一過性の問題ではなく、未解決の基本的な問題が残されていることを顕在化させたものだと思われます。経済復興が優先され、勢い消費者政策は後回しにされかねない様子も見受けられますが、このような時だからこそ、消費者被害を抑止し健全な経済活動を推進するための施策が求められているのではないでしょうか。学生の皆さんの自主的な議論を尊重しつつ、少しでも問題の解決に貢献できるような提言を目指し、検討を進めていきたいと考えています。
研究室にて
長く続く経済不況、更には震災を経て、競争政策の果たすべき役割を再確認する必要性が高まっているように思います。経済規制改革、独占禁止法制(実体法及び手続法)の在り方、個別の事件処理などの様々な角度から、なぜ・どのように競争すべきなのか、合理的な説明を目指して検討を進めてまいりたいと考えています。