公共政策大学院TOP > 概要 > FDと公共政策ワークショップの事後評価 > 2004年度 ワークショップI プロジェクトB

■プロジェクトB:地域経済の自立に向けた公共部門・民間部門の課題

a)概要

 プロジェクトBは、東北経済の自立に向けた課題をテーマとし、公共部門、民間部門双方に求められている課題は何か、どのような政策的対処が必要かについて調査を行った。前期(2004年4月〜7月)においては、東北経済の現状とそれを取り巻く環境変化について幅広く基礎調査を行った。後期(2004年10月〜2005年2月)においては、前期の調査の結果浮かび上がった諸問題の中から、東北経済の自立に向けた鍵となる課題として、地域の産業基盤の強化に焦点をあてることとし、地域資源を活かした既存産業の高度化、地域企業を活かした新産業の創出、地域資金を活かした中小企業金融の強化という三つの分野について集中的な実地調査を行った。調査結果は、「地域の資源・企業・資金とネットワークを活かした産業基盤の強化」と題する報告書にとりまとめられ、上記三分野それぞれについての政策提言が行われるとともに、分野横断的な提言として、地域経済ネットワークづくりが提唱された。

b)調査経過

ア.前期調査

 前期の基礎調査は、@東北経済のマクロ的な姿(面積・人口、県民所得、経済構造、就業構造、財政構造等)を日本経済全体と対比しながら把握し、その現状と構造的特徴を捉え、A東北経済を巡る経済社会環境の変化を中期的視点から特定し、Bそれらの環境変化が東北経済全般や公共部門・民間部門それぞれにもたらす問題を概括的に捉えることを目的に行われた。「何が問題か」を参加者自身が発見することが前期の目標であった。調査の過程では、参加者自身による経済データや関係資料・文献の調査に加え、財務省東北財務局、日本銀行仙台支店、日本政策投資銀行東北支店、東北経済連合会の実務家からの見解の聴取及び意見交換に相当の重点が置かれた(合計9回実施)。また、ワークショップの集団作業は、参加者が交代で進行役を務めるとともに、作業が必要な事項の洗い出しや作業スケジュールの設定、管理なども各参加者が自発的に行うこととされるなど、主体的な取組みが求められた。前期終了後に中間報告書の取りまとめが行われた。

イ.後期調査

 後期調査は、東北経済の自立に向けた鍵となる課題として、産業基盤の強化に焦点をあて、そのために取組みが必要な三つの分野(@地域資源を活かした既存産業の高度化、A地域企業を活かした新産業の創出、B地域資金を活かした中小企業金融の強化)について、集中的な実地調査を行った。実地調査のテーマ、取組み事例の選定は、前期に行った東北経済の諸問題についての基礎調査の中から、ワークショップ参加者それぞれの問題意識に基づき選定された。また、インタビュー先の選定、クエスチョネアの作成、調査旅行計画の作成も各参加者によって行われた。「問題に対処するにはどうしないといけないか」を参加者が自らの足で調べ、自らの頭で考えることが後期の目標であった。

 実地調査は、次の通り、延べ18回に渡って行われた。
@「地域資源を活かした既存産業の高度化のための政策対応」に関連する実地調査先
(遠野市における農林業・観光業の高度化に関する取組みと、山形県における園芸農業の高度化に関する取組みについて調査)遠野市役所産業振興部遠野グリーンツーリズム推進室、遠野地方振興局企画総務部企画振興課、遠野建設工業株式会社、遠野市役所、遠野市産業振興センター、遠野市森林総合センター、遠野ふるさと公社、山形県庁農林水産部農政振興課
A「地域企業を活かした新産業創出のための政策対応」に関連する実地調査先
(仙台フィンランド健康福祉センター・プロジェクトと神戸医療産業都市構想について調査)仙台市経済局産業政策部国際経済課、仙台市経済局産業政策部産学官連携推進課、産電サーブ株式会社、財団法人仙台市産業振興事業団(2回訪問)、財団法人神戸市先端医療振興財団
B「地域資金を活かした中小企業金融強化のための政策対応」に関連する実地調査先
(米沢ビジネスネットワークオフィスと神戸コミュニティ・クレジットについて調査)
財務省東北財務局理財部、日本政策投資銀行東北支店、米沢ビジネスネットワークオフィス、日本トラストファンド株式会社、株式会社みなと銀行

c)調査結果

 調査結果は報告書にとりまとめられた。第1章「東北経済の自立のための鍵となる課題」においては、東北経済の現状、環境変化、自立の必要性が論じられている。更に、自立のための鍵となる課題として産業基盤の強化が必要であること、特に「地域資源を活かした既存産業の高度化」、「地域企業を活かした新産業の創出」、「地域資金を活かした中小企業金融強化」が重要テーマである理由が述べられている。第2章「東北の産業基盤強化のための政策対応」においては、上記3つのテーマについて、実地調査事例の分析評価が行われ、東北の他地域にとっても有効と考えられる政策対応が次のように提言されている。
@地域資源を活かした既存産業の高度化のための政策提言〜総合産業化のためのITネットワークの活用
A地域企業を活かした新産業高度化のための政策提言〜地域企業の参加を高めるための仕組みづくり
B地域資金を活用した中小企業金融強化のための政策提言〜情報共有とリスク分担を通じた中小企業金融の円滑化
また、第3章「東北の産業基盤強化のための地域経済ネットワーク」においては、上記の政策提言に共通する他主体・多分野の主体からなるネットワークの機能と、行政の役割について考察が行われている。

▲このページの先頭へ