公共政策大学院TOP > 概要 > FDと公共政策ワークショップの事後評価 > 2004年度 ワークショップI プロジェクトC

■プロジェクトC:環境と経済の統合を巡る関係各主体の役割とネットワーク

a)ワークショップのねらい

 プロジェクトCでは、環境政策の分野で最先端とされる市場のグリーン化に向けての有力な手法の一つである「グリーン購入」を題材として採用した。このねらいは、今日の日本が直面する政策課題の一つである「循環型社会の構築」に関する基礎的な知識を修得するとともに、このような「社会の持続性の確保」を目的とする環境政策を出発点に、他の政策分野においても共通の課題である地域経済との関わりや、さらには企業・NGO等の経済社会を構成する様々な主体間の連携の必要性等に視野を広げていくことなどがあった。

b)ワークショップの経過

ア.調査のフレームワーク

 プロジェクトCでは、
@2004年10月に仙台において開催されたグリーン購入世界会議にその準備過程を含めて可能な限り参画することが中心作業のひとつとしてあらかじめ設定されていた。

 他方で、「グリーン購入の促進」という政策課題に対して、具体的にどのような問題意識に基づいて検討を行うかなどの調査の内容や、1年間を通じての進め方(スケジュール)などについては、学生自身で討議し、決定していくことが求められた。

 その結果、調査のフレームワークとして、仙台市をはじめとする関係機関の協力を得て、
A宮城県仙台地域のこれまでの取組みや各主体の役割、諸外国の先進的な取組み、全国の自治体の取組み等について文献やヒアリングを通じて調査分析を行うこと、
B仙台市を念頭に今後とり得る促進方策についての考察を深めることが採用された。

イ.調査の経過

 実際の活動においては、まず、外部講師を含めてグリーン購入とその前提となる循環型社会の構築に関する基礎的な講義を受けた上で(4〜5月)、学生自らが、個別のテーマ設定、作業分担、作業スケジュールの策定を行い(5〜6月)、自らスケジュール管理と進捗状況を含めた作業計画の見直しを行いながら(6月以降)、2004年11月に実施された中間報告会を経て、2005年2月に最終報告書をとりまとめた。

 この過程では、前述の世界会議への積極的な参画はもとより、仙台市・宮城県のみならず、先進的な取組を進める全国の自治体等に直接出向いて取材を行うなど実際の政策決定の場でどのような議論が行われているかに直接触れる活動が行われた。

c)ワークショップを通じて得られたもの

ア.最終成果としての報告書の作成

 以上のような調査検討に基づき、「グリーン購入の普及について」と題し、循環型社会におけるグリーン購入の意義や諸外国での取組を考察した上で、仙台市を念頭に置きながら、供給側への働きかけ、事業者への普及方策、市民への普及方策等の課題に対し実現可能な政策の提案を目指した内容の最終報告書を作成した。

 報告書作成の過程では、世界会議及び関連行事への準備過程への参画・貢献を通じた行政の現場における(調査)活動、先進的な諸外国と我が国との比較による国際的な視点の導入、地方公共団体やNGOに現実に採用されている政策の分析・評価を積極的に行い、現実的・具体的な政策課題の摘出と政策の提案を行った。

 特に調査においては、海外資料も含めた資料収集方法、収集した資料の取捨選択、分析方法を学ぶとともに、現実に政策の主体となっている地方公共団体やNGOに対するヒアリングなどの現地調査を多用することにより、現実社会の諸課題を調査、把握、分析する能力を得た。

 また、学生主体での最終報告書の作成やパワーポイントによるプレゼンテーションのための資料を作成することにより、分かりやすく説明することの重要性を体感することができたと考えられる。

イ.ワークショップの作業過程を通じて修得されたもの

 集団作業たるワークショップの作業を学生により自主的に運営する経験を通じて、作業分担、スケジュール管理、作業計画の見直しを行うことにより、組織として案件を処理することについての経験をえるとともに、世界会議及び関連行事の準備過程への実際に参画したことから、ロジスティックスを含む連絡調整の重要性と、自らの提案が実際に採択され実現していくまでに、関係者を説得して理解を得ていく能力の重要性を身をもって体験した。

 さらに、ワークショップの全過程を通じて、環境問題という社会の持続可能性を扱うテーマを通じて、経済問題・社会問題との関わりという総合的な視点が求められること、問題解決のためには、ひとり政策当局のみならず、企業・NGO等の経済社会を構成する様々な主体との連携を図っていくことが求められていることをヒアリングなどの調査活動を通じて理解した。

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