公共政策大学院TOP > 概要 > FDと公共政策ワークショップの事後評価 > 2004年度 ワークショップI プロジェクトD

■プロジェクトD:産業立地から見た仙台市の都市開発案件

a)趣旨

 仙台市においては、東北地方の中枢都市として事業所、小売店舗等の集積が進んでいるところであるが、都心部商店街の伸び悩み、製造業の立地の立ち後れ等の問題を抱えているところである。

 さらに、旧国鉄長町操車場跡地開発(あすと長町地区)、仙台港後背地のという公的関与の深い2地区について、その将来像を明確化していくことが喫緊の課題となっている。

 上記の状況にかんがみ、仙台市における産業立地の現状及び課題を踏まえつつ、上記2地区について、特に産業誘致のあり方について、検討及び提言を行った。

b)経過概況

ア.前期

 まず、市当局から、両地区の概観及び上記2地区の担当部署からのレクチャーを受けた。

 当職からは、当初から

  • 「最初から一定の方向性ありき」の政策立案は行わないようにすること。
  • できる限り、客観的データに基づき、政策を考えること。
を指示したところ。

 その上で、毎回に以下のような事項について説明及び議論を行った。

  • 産業政策、経済政策の目的、手段、歴史
  • 土地開発の経緯(新産・工特や国鉄跡地問題の経緯)etc.

 free discussionの形で、仙台市の産業構造のあり方や両地区のあり方について検討を行った。

 仙台市の産業立地の状況については、統計のみならず立地状況マップ(報告書には活用せず)を作成した。

 夏期休暇に補講(経済関係)と仙台港背後地への見学を行った。

イ.後期

 1)仙台市の産業立地状況全般、2)仙台港背後地、3)あすと長町の3つの班に分けて、作業を行った。

 前1者については、主として統計データの収集・整理・分析

 後2者については、種々の方向性の検討。

 11月頃から中間報告(12/4に実施)の準備を兼ねて、報告書としての仕上がりを考慮した、議論のとりまとめを行った。中間報告については、プレゼン資料の体裁や論理構成については指導したものの、内容については学生主体で対応がなされた。

 最終報告については、内部の報告会用と仙台市への説明用の2つのversionを作成した。最終報告書の「てにをは」の修正等添削等は相応に行ったものの、報告書の内容自体及びプレゼンテーション資料自体は、学生主体で作成された。

c)成果

ア.報告書について

 以上のような経過を経て、仙台市の産業構造の分析を踏まえた上で、仙台港背後地・あすと長町の両開発案件のあり方について大胆な提言を盛り込んだ報告書を作成した。開発案件における事業全体及び個々の進出事業者の「採算性」を重視し、仙台港背後地については土地の早期売却、あすと長町については大規模小売商業等に焦点を絞った誘致活動及び居住・就業人口比率を見直し居住中心にすべきこと等を主たる内容としている。

 方向性がnegativeとの意見も学内・仙台市の双方からあったところであるが、「結論なり一定の方向性ありき」というスタイルをとらずに、財政を始め現下の経済状況等を十分に勘案し、かつ進出事業者の視点を重視したきわめて現実的な報告書であると考えている。

イ.ワークショップ全体について

 まず、学生主体で、議論や作業を行う場を形成できたこと、政策立案に必要な知識・情報等を自ら主体的に集めてくるようになったことが挙げられる。また、スケジューリング等のロジ管理、政策文書のwriting、presentation等についても、相応の習熟がなされたものと理解している。

 最後に、経済活動と行政のinterfaceの難しさ、経済合理性と公益のバランスの難しさを、学生なりに実感してくれたと思われる点が、本ワークショップの最大の成果ではないかと考えている。

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