公共政策大学院TOP > 概要 > FDと公共政策ワークショップの事後評価 > 2005年度 ワークショップI プロジェクトD

■プロジェクトD:人口減少下における白石市への政策提案

a)趣旨

 宮城県白石市は、宮城県南部の地方都市であるが、近年、人口減少下にある。

 白石市からの依頼を受けて、この白石市の今後のあり方について、WS-Dで検討を行った。「あり方」ないしは「活性化策」と言っても広範に過ぎるので、後述のとおり産業という観点からアプローチを行い、政策提言を行った。

b)経過概況

<前期>

 まず、白石市当局から、同市の概況及び市当局の問題意識についてレクチャーを受けた。

 当職からは、まずは、「雇用の場があってこその定住人口であり、生産活動の維持・向上があってこその生活水準の維持・向上」であるので、雇用・生産活動という観点から、「産業」から検討を行うこと、とりわけ就業人口という観点から、まず製造業の検討を行う方針を学生に提示したところである。

 経済学的な理解を踏まえつつ、白石市の産業について、統計及び主要事業所のヒアリングを行い、市当局と誘致事業所との認識のギャップが存在することが明確になってきた。また、同時に、雇用という観点からの検討も加えていった。

 当初の白石市当局からのレクチャーの際に、「誘致した企業の従業員が必ずしも市内に住んでくれる訳ではない」との話から、同時に住環境(住居、買い物、教育)という点からも検討を行ったが、対応可能な問題点は必ずしも明らかでなく、産業としての小売商業という観点に転換した。

<後期>

 9月にプレ中間報告、10月に中間報告を行ったが、その段階までに、1)製造業と2)小売商業に分かれて更なる検討を行った。プレ中間報告、中間報告とも論理の流れについては指導したものの、内容については学生主体で対応がなされた。

 製造業については、誘致事業所の操業継続という観点から、白石市及び白石市周辺の中小企業との誘致事業所の結びつきの強化という点を中心に検討を行った。

 小売商業については、商業集積という点を軸に検討を行ったが、中心市街地の商店街との関係もあり、徐々に「街づくり」問題にシフトしていったという経過がある。

 同時に、プレ中間報告での指摘を踏まえ、人口動態(特に15-24歳の社会減)についても、その原因について掘り下げた検討を行った。

 2月の最終報告についても、論理の流れ及び文書の「てにをは」等については指導したものの、内容については学生主体で対応がなされた。

 2/28に白石市長及び白石市役所幹部に報告を行った。この報告の際の報告書の内容については、内容面については教員側からかなりの指導を行った。

c)成果

ア.報告書について

 以上のような経過を経て、白石市について、人口減少は不可避との前提を置いた上で、誘致事業所とのコミュニケーションの強化を製造業政策の軸に、商業集積を中心市街地に現下の商店街より規模を大幅に縮小して再形成するとともに人々の「溜まり場」を形成することを小売商業政策の軸にした報告書が作成された。

 製造業政策については、ありきたりながら実行可能なもの、小売商業政策については実現可能性については予断を許さないものの都市の規模に応じたものと考えている。

イ.ワークショップ全体について

 まず、学生主体で、議論や作業を行う場を形成できたこと、政策立案に必要な知識・情報等を自ら主体的に集めてくるようになったことが挙げられる。また、スケジューリング等のロジ管理、政策文書のwriting、presentation等についても、相応の習熟がなされたものと理解している。

 最後に、経済合理性と公益のバランスの難しさ、街や地域に関する様々な考え方を、学生なりに実感してくれたとすれば、本ワークショップの最大の成果ではないかと考えている。

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