公共政策大学院TOP > 概要 > FDと公共政策ワークショップの事後評価 > 2006年度 ワークショップI プロジェクトA

■プロジェクトA:地域における地球温暖化対策(仙台市を例として)

a)趣旨

 近年、地球温暖化対策の重要性は広く認識されてきており、また、地球温暖化対策については国レベルの取組だけでなく地域レベルの取組も重要であることが一般論としては広く指摘されているものの、地域レベルでの具体的な取組はあまり進展していない状況にある。

 このような状況を踏まえ、本ワークショップでは、地球温暖化対策の必要性と緊急性、地球温暖化対策における国と地方の役割分担などを検討した上で、仙台市環境部環境都市推進課の協力を得て、仙台市の地球温暖化対策推進計画を題材に、地域レベルにおける効果的な地球温暖化対策のあり方について検討することとした。

 ワークショップの実施にあたり、以下のような基本方針を設定した。
ア.仙台市の立場に立ち、具体的で実現可能性の高い政策提案を行うことを目標とする。
イ.定性的な検討だけでなく、可能な限り定量的な検討を行うことにより、効果的な対策のあり方について検討する。
ウ.分野や課題ごとの担当者を固定せず、メンバー全員が常に問題の全体を把握した上で対策を検討する。

b)経過

(内容について)

 前期は、地球温暖化に関する科学的な知見、国際的な取組及び国レベルの取組、地球温暖化対策に関する仙台市の取組などについて、市役所職員の講義や文献購読などを通して理解を深めたのち、仙台市の地球温暖化対策推進計画の問題点について、民生家庭、民生業務、運輸など二酸化炭素の排出源の部門毎に要因分析を行い、それに基づいて政策提案に関する基本的な考え方について検討した。また、地球温暖化に限らず環境法政策全般についての基礎知識を習得するため、ワークショップのメンバーには環境法Iの授業を受講することを推奨し、結果としては全員がこの授業も受講した。

 後期は、本ワークショップで政策提言を行う際の重点分野として、地球温暖化対策推進計画の進め方及び部門別では民生家庭、民生業務及び運輸の各部門を取り上げ、それぞれについての政策提案について検討した。具体的には、ワークショップ内の検討と並行して、仙台市及びその周辺における行政、公営企業、企業、NPO等の関係者へのヒアリング、先進事例としての東京都、京都市等での実地調査などを行うことにより議論を詰めていくという作業が中心となった。

(ワークショップの進め方について)

 ワークショップの進め方については、毎月交代で異なる学生がリーダーと書記を担当することにより、学生主体で進行管理を行うこと、及びメンバー全員がワークショップの進行に責任を持つ機会を得ることができるよう配慮した。

 また、原則として毎月末にその月の成果をとりまとめた発表会を開催することにより、メンバー内の議論だけでなく発表及び質疑応答の能力も高めることができるよう努めるとともに、この発表会が毎月の作業の進展についての目標となりワークショップの進行にメリハリがでるよう配慮した。

 具体的には、以下の発表会を実施した。
4月:仙台市の地球温暖化対策の評価と課題について(各自発表)
5月:地球温暖化問題の現状、国際レベル及び国レベルの取組及び仙台市の地球温暖化対策の分析評価(パワーポイントを用いて、チームとしての報告、以下同じ)
7月:二酸化炭素排出源の部門毎の要因分析及び対策の基本的方向について
9月:中間報告会での発表内容について
(10月 中間報告会)
12月:具体的な政策提案の内容について
1月:最終報告会での発表内容について
(2月 最終報告会)

c)成果

 重点分野として選択した4つの課題について、それぞれ、仙台市地球温暖化推進計画の進め方については実践計画の策定及び計画の進行管理体制の確立、民生業務部門については仙台市施設におけるESCO(Energy Service Company)事業の実施、民生家庭部門については建築物計画書制度及び共同住宅性能表示制度の導入、運輸部門についてはバス事業者におけるチャレンジ予算制度とそれを用いた利用者増加策の検討という政策提案を行った。具体的な内容については最終報告書を参照されたい。

 調査の結果は、本大学院の最終報告会で発表したほか、仙台市(環境都市推進課)においても報告会を行い、具体的な政策提案の内容については高い評価を受けるとともに、その実施に際しての問題点などについてのコメントをいただいた。

 ワークショップを通して、学生たちは、ある問題に関する現状の把握及び問題点の分析、先行研究及び各種事例の調査、関係者へのヒアリング、具体的な政策の企画立案のために必要な法的及び実際上の諸課題の検討、政策提案の効果と限界の分析など、政策研究の内容として必要な作業を全て経験することにより、政策の企画立案のための方法論を学び、また一方では効果的な政策提案の難しさも体感することができたと考える。さらに、集団作業におけるチームワークのあり方、スケジュールの管理、多数の聴衆の前でのプレゼンテーション、論理的で分かりやすい報告書の作成などに関しても、ある程度習熟することができたと考える。

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