
ごあいさつ
「公」を真剣に議論できる学び舎
伏見 岳人
東北大学公共政策大学院は、2004年に、公共政策分野における高度専門職業人の養成を目的として発足しました。そこから21年以上が経過し、本大学院を修了した多くの人々が、さまざまな公共政策の現場で日々活躍しています。
公共政策の現場で働くためには、どのような資質が求められるでしょうか。
まず、「公」とは何か、を根源的に考える能力が、全ての基礎になります。「公」のあり方は、時代によって変化し、これからも変わり続けます。それに伴って、「公」に対する社会的ニーズも、今日では非常に多様化しています。それらを的確に把握しつつ、より良い「公」の実現を目指して、共同体の一員としての役割を果たす心構えを、公共政策に従事する者は必ず備えていなければなりません。
その能力と姿勢を、具体的に鍛える場所こそが、ここ東北大学公共政策大学院です。
本大学院の最大の特徴は、「公共政策ワークショップ」に代表される体験型授業プログラムです。公共政策の現場で長年奮闘してきた実務家教員と、法学・政治学の最先端の研究に挑戦している研究者教員、それに多様なバックグラウンドを有する学生たちが協働して、現在進行形の政策課題に実践的に取り組んでいます。
たとえば、2025年度には、東京圏への一極集中をどのように是正できるか、地域資源を活用した魅力ある農山漁村づくりをいかに進めるべきか、国際的な指標が芳しくない日本のジェンダー・ギャップ状況にどう取り組むべきか、再生可能エネルギーの普及や自然との共生を通じた豊かな地域づくりをどうすれば実現できるか、といったテーマが扱われました。
いずれも、我々の未来を占う重要な政策課題ばかりであり、そして簡単には答えの出ない難問ぞろいです。あらかじめ模範解答の載っている教科書や解説書は、全く存在していません。しかし、その解決策を探し求めるべく、一年間、さまざまな現場で働く人たちにインタビューを重ね、数多くの文献や資料を読み解き、時には夜遅くまで仲間たちと議論を重ね、どのチームも独自性のある解決策を提言するまでに至りました。
また、本大学院では、法学や政治学、経済学の専門知識を教える多彩な授業が実施され、政策分野に関する演習も数多く展開されています。それらを通じて、公共政策の企画立案に求められる専門性を養いつつ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を錬成することを目標としています。
世界的な地政学的緊張の高まり、急激な物価の高騰による潜在的な経済不安、生成AIの登場による人類知の脆弱性の露呈など、我々を取り巻く環境はますます複雑化する一方です。その未曾有の不確実性を直視しながら、本大学院に所属する教職員や学生は、未来の「公」のあり方について、これからも真剣に議論を続けてまいります。
本大学院の門をたたき、新たな伝統を共に作り上げてくれる皆様との出会いを、心よりお待ちしています。