2025年8月26日(火)から29日(金)まで、岩手県奥州市で、夏季連続講義「日本政治外交史演習Ⅰ」が、開催されました。法学部生10名と、法学研究科博士課程の1名が、4日間の合宿形式で、さまざまな活動に取り組みました。
授業のテーマは、「地域資料から見えてくる地方政治史」。岩手県奥州市教育委員会が保存している歴史資料の調査を通じて、近代における地域秩序や地方政治について、理解を深めることが目的です。
今回は、水沢町長や衆議院議員を輩出した名家「旧高橋家住宅」内に所蔵されている歴史資料を、整理し、撮影してデジタル化する作業を、皆で実施しました。
「旧高橋家住宅」は、2011年に、国の重要文化財に登録されています。しかし、膨大な費用負担から改修が進まず、現在では非公開となっています。学生たちはまず、奥州市教育委員会の高橋和孝主任学芸員から、奥州市の文化財行政についての講義を受けた上で、実際の建物の中を、特別に見学させてもらいました。
奥州市は、昔の城下町を物語る建物が数多く残っており、当時の家屋を観光資源などに用いています。有名な後藤新平の旧宅や、近世時代の建物を保全している武家住宅資料館を見学し、利活用が進んだ事例についても、皆で学びました。また後藤新平の幼なじみであった元総理大臣を顕彰する斎藤實記念館にも、皆で見学に伺いました。
3日目の8月28日には、奥州市立東水沢中学校を訪問して、3年生121人との合同授業を実施しました。「旧高橋家住宅」の利活用を進めるためには、どうしたら良いのか?大学生たちは、四つの教室に分かれて、地域の未来を担う若者たちと一緒に、具体的なアイディアについて話し合いました。東水沢中学校では、ICTを用いた教育活動が積極的に行われており、全ての生徒が「ロイロノート・スクール」を使って、オンライン上でグループ作業の成果共有などを進めていく姿に、我々も大きな刺激を受けました。
最終日は、奥州市立後藤新平記念館の2階スペースをお借りして、メキシコのコリマ大学の皆さんと、オンラインでの合同授業を開催しました。JICA(国際協力機構)のご協力により、「後藤新平の故郷から考える日本の過去と未来」と題して、日本語とスペイン語の同時通訳による合同授業が実施できたのです。人口減少が進む日本の地方都市において、文化財の保全や利活用をどのように進めていけばよいのか。日本とメキシコの大学生が交流し、お互いの理解を深める貴重な時間となりました。
今回のさまざまな企画は、奥州市教育委員会、奥州市立東水沢中学校、奥州市立武家住宅資料館、奥州市立後藤新平記念館、奥州市立斎藤實記念館のそれぞれの皆様のご協力によって実現しました。ここに記して、あらためて御礼申し上げます。
なお、東水沢中学校との合同授業については、地元紙『岩手日報』(2025年8月30日付)と『胆江日日新聞』(2025年8月29日付)に、記事として掲載されました。
『岩手日報』(2025年8月30日付)
『胆江日日新聞』(2025年8月29日付)