東北大学公共政策    

WSD年間活動報告

Ⅰ.前期

主担当の御手洗教授による東日本大震災の福島県における被害や現在に至るまでの道のりについての講義から始まりました。また他にも学内の福島県の原子力被災地出身の学生の講話や多くの福島復興に関する文献調査など研究対象である福島県の原子力災害被災地に関するインプットを中心に行いました。

その中で、5月に福島県双葉郡双葉町への訪問、及び研究対象地域である富岡町・大熊町での合宿を行いました。提言先地域の現状をその時初めて実際に目の当たりにし、メンバーそれぞれが様々な疑問や課題を抱きました。そこで抱いた想いを両町役場の方々へのヒアリングし、現状の両町の理解を深めていきました。

前期ではこのように講義や文献調査だけでなく、実際に町へ訪問して現地の方へのヒアリングも多く行い、両町を「自分事化」できるように様々な角度から情報を得て、理解に努めてきました。そして中間報告会へ向けた大まかな課題感や提言の方向性をまとめていきました。


図 1 大熊町インキュベーションセンター見学の様子


図 2 富岡町のワイン畑から海を臨む様子

Ⅱ.中間報告会

前期のヒアリングなどを通じて、メンバーそれぞれが抱いた課題ごとに大まかに班分けを行いました。また両町には様々なステークホルダーがいる中で「何をする事が町の復興に繋がるのか」ということをメンバー全員で時間をかけて、何度も議論しました。そこで出た結論を達成できるように、班ごとの目標も設定しました。発表に向けて相手に伝わりやすいように内容の構造にこだわるだけでなく、スライドの見やすさや発表の仕方にもこだわって多くの時間を費やしました。

報告会本番では、他ワークショップの学生や、教員の方々から鋭い意見や最終報告に向けた示唆を頂くことができました。

 

Ⅲ.後期

ヒアリング調査や現地調査が主な活動でした。

8月に再び現地で合宿を行い、中間貯蔵施設や福島第一原発などの視察をしました。原子力災害の根源を実際に見て、かつてこの町を支える産業であったものが、現状町に大きな被害を与えていることに対して複雑な感情を抱きました。

この合宿の後は、主に課題に対して考えている施策案の先進事例のヒアリング調査を行っていきました。先進事例は日本全国各地の先進事例を調査し、班ごとに官民問わず様々な方に調査の協力をしていただきました。

また最終報告会直前にも復興庁の方に政策提言案の壁打ちをさせていただき、それぞれ一人一人の施策案や全体としての構成を磨き上げ、より具体的に完成へ近づけていきました。


図 3 福島第一原発の前での集合写真


図 4 伝承館前での集合写真

 

 

Ⅳ.最終報告会

最終報告会では、復興局の方や同校の学生、教員の前で今までの成果を報告しました。最終報告会に向けて、個人の施策の詰め合わせでなく、グループだからこそできる提言案とは何かを全員で考え続けました。そして、各施策を復興の段階ごとに繋ぎ合わせて原子力災害からの復興のモデルケースとなるような全体としての政策提言へと結びつけました。ここに至るまで終わりが見えない状況でしたが、学生のみならず、担当教員ともたくさんの議論を交わしてきて、何とか形にすることができ、グループ研究の意義を見出だしアウトプットできたと思います。

最終報告会を終えた後、年末年始からは数多く行ってきたヒアリング報告書や最終報告書の加筆修正を行っていきました。最終報告会から得られた新たな視点の考察や、全体構造の見直しなど1年間全てのおさらいを行いました。メンバー同士で確認や議論を行いながら、最終報告書を完成することができました。

 

 

Ⅴ.現地報告会

2月19日、20日で提言先である富岡町・大熊町にて政策提言の発表をしてきました。1日目は大熊町、2日目は富岡町で報告しました。両日ともとてもお世話になった町役場の方々や民間事業者の方、また多くの報道陣の方などがお越しくださり、とても多くの方々の前で発表させていただきました。1年間メンバー全員が取り組んできた成果を形にして町の方々に送らせて頂くことができ、無事報告会を終えることができました。


図 5 現地報告会の報道

 

Ⅵ.終わりに

最後になりますが、WSDはこの1年間何度も富岡町・大熊町に伺っただけでなく、常に頭では両町のことを考え続け、「どのようなことをしたら町の復興のためとなるのか。」という問いを追いかけ続けてきました。そしてこのワークショップを通して、全員がこの両町に対して愛着を抱くことができました。それはこの町で出会った方々や触れた自然等に大きな魅力や情熱を感じたからだと思います。これから先社会人になって、もし私たちが直接的にこの両町に関われずとも、この経験を心の中に大切にとっておき、想い続けていきたいと思うようになりました。

1年間WSDの研究活動に際して大変お世話になりました関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

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