東北大学災害科学国際研究所と福島大学行政政策学類の主催で、2026年8月30日から9月4日に、福島県浜通りの4町(富岡町、浪江町、双葉町、大熊町)をフィールドに、浜通りの復興とまちづくりをデザインする「日タイまちづくりJoint Workshop in 福島」が開催されました。
公共政策大学院もこのワークショップに共催として参加しており、本学からは、公共政策大学院生7名(うち1名はスタッフとして参加)と、法学部生、経済学部生、工学部生が1名ずつ参加し、タイのチュラロンコン大学建築学部の15名の学生とともに、浜通りの未来について熱い議論が展開されました。
以下、参加した学生にワークショップの模様をレポートしてもらいました。
2026年8月30日から9月4日にかけて、日本とタイの学生24名が「日本・タイまちづくり Joint Workshop in 福島」に参加しました。参加者は富岡町、浪江町、双葉町、大熊町を訪れ、震災と復興の現場を実際に見ながら、地域で暮らし、まちづくりや観光などに携わる方々からお話を伺いました。また、日本とタイの学生による混成グループで議論を重ね、最終日には浜通りのまちのにぎわいづくりに向けた提言を行いました。
プログラムの前半では、震災と復興の現場を訪れ、浜通り地域が歩んできた歴史と現在、そしてこれからの地域づくりについて、実際に見て感じることから始まりました。
初日は富岡町にて、とみおかアーカイブミュージアムと富岡高校を訪れました。
とみおかアーカイブミュージアムでは、震災前の地域の暮らしから発災後の様相、その後の復興に至るまでの歩みについて理解を深めました。
また、富岡高校では「富岡町3.11を語る会」の渡辺様から、実際に被災した現場を前に、震災当時の状況や避難、その後の地域の変化についてお話を伺いました。
震災の経験だけではなく、富岡町が持つ地域資源や、これからのまちづくりに生かすことのできる可能性についてもお話しいただけたことで、今後のまちづくりの方向性について各自が考えるきっかけとなりました。
翌日は東京電力廃炉資料館を訪れた後、東京電力の案内のもと福島第一原子力発電所を視察しました。廃炉に向けたさまざまな取組みについて説明を受け、長期にわたる作業が一つひとつ着実に進められていることを学びました。
また、普段なかなか目にすることのできない福島第一原子力発電所を実際に視察したことで、東日本大震災と原子力災害による被害の規模の大きさを改めて実感するとともに、浜通り地域において復興を進めていくことの必要性を再確認できる機会となりました。
現場を自分たちの目で見る経験は、それまで知識として捉えていた地域の課題に対して、それぞれが「自分たちなら何ができるのか」と自分ごととして捉える機会になったと実感しています。

@福島第一原子力発電所にて
その後はとみおかワイナリーにて、震災によって大きく変化した地域の土地を活用し、ワインづくりを通じて富岡町の魅力を生み出す取組みを視察しました。実際に活動をされる方の話をお聞きできたことで、参加者それぞれが浜通り地域の資源の可能性や、にぎわいづくりの方法について考える機会が得られたと感じています。

@とみおかワイナリーにて
ワークショップの中盤では、地域の観光やまちづくりに関わる方々から、現在の取組みや課題についてお話を伺いました。
浪江町では、道の駅なみえで浪江町観光移住課の磯貝様より、町が進めている観光の取組みや現在の状況、今後より多くの人に町を訪れてもらうための課題などについてお話を伺いました。

@道の駅なみえにて 浪江町観光移住課磯貝様による講義の様子
大熊町では、大野駅周辺を歩いた後、大熊町産業交流施設「CREVAおおくま」で、大熊町住民の南場様から、震災前後の町の様子や地域で営まれてきた暮らしについてお話を伺いました。
震災前の大熊駅周辺には商店や人々の往来があり、現在の風景だけからは知ることのできない地域の日常や記憶があったことを、当時の地図やエピソードを交えながら伺いました。

@CREVA大熊にて
こうした現場での体験や地域の方々との交流を経て、プログラムの後半では、双葉町の交流拠点施設FUTAHOMEにて、日本とタイの学生による提言にむけたグループワークを行いました。
タイの学生は、建築・都市計画・ランドスケープなどの専門性を生かし、空間や土地利用、地域の魅力をどのように形にしていくかという視点からアイデアを出す一方、日本の学生も、都市計画、経済、法政策など、それぞれが学んできた異なる専門分野を掛け合わせながら議論を行いました。
普段使い慣れていない英語での議論に戸惑う場面もありましたが、実際に同じ場所を訪れ、同じ経験をした中で、それぞれがそこで何を感じたのかを共有することで、活発な議論が行われました。

@双葉町地域活動拠点FUTAHOMEにて
最終日の発表では、各チームが現地で感じたことと、それぞれの専門性を生かしながら、異なる切り口から浜通りのにぎわいづくりに向けた提言を行いました。
一つのチームはデジタル技術を活用して各町の観光資源や地域の物語を結ぶ取組みを、一つのチームは地域を新しいことに挑戦しながら学ぶ場として捉える取組みを、もう一つのチームはスポーツをきっかけに来訪者と地域との継続的な関係を生み出す取組みを提案しました。

@双葉町地域活動拠点FUTAHOMEにて
タイから参加した学生や、今回初めて浜通りを訪れた学生など、多様な立場の参加者がそれぞれ感じたことを提言に盛り込んだことで、新規性のあるアイデアも数多く提示されました。発表を聞いた関係者の方々からは、今後のまちづくりの新たな可能性を感じさせる提言だったと評価いただきました。
少子高齢化や人口減少、それに伴う地域の衰退は、日本の浜通りだけでなく、タイを含む世界のさまざまな地域が直面する共通の課題であり、今回異なる国で暮らし、異なる専門分野を学ぶ学生が、一つの地域を一緒に歩き、同じ課題について考え合ったことで、地域や国を越えて社会の課題を考えていく仲間を得ることができたことは、本ワークショップの何よりの成果と言えるでしょう。

@双葉町地域活動拠点FUTAHOMEにて