2026年度のワークショップAでは、「人口減少下でも持続可能なまちをつくるために山形市が進めるべきことは何か」をテーマに、9名の学生が山形市をフィールドにして調査研究を進めています。
8月24日から26日には、その活動の一環として、山形市と同じく県庁所在地で中核市である宮崎市を訪れ、市職員など関係者の方々へのヒアリング、市内各地の視察、職員の皆様との交流などを通じて、人口減少に直面する都市が抱える課題とその対応を調査しました。
初日は、はじめに清山 知憲 宮崎市長を表敬訪問し、市長との懇談では、全国792市の中で62市存在する中核市には共通する政策課題がある一方で、同じ中核市でも、近隣の大都市のベッドタウンとしての性格が強い都市と、県庁所在地として病院や空港・港湾、大学など幅広い都市機能をフルセットで担う都市とでは、直面する課題や財政支出の構造が異なるという趣旨のお話しを伺いました。こうしたお話しを踏まえると、宮崎市と山形市を比較する際には、人口規模や制度上の区分だけでなく、それぞれの都市が担う機能や周辺都市との関係まで視野に入れる必要があり、これらは今後、調査研究を進めていくに当たって重要な視点になると考えています。

(清山 宮崎市長との記念撮影)
続いて、人口減少対策や地域公共交通などについて、担当職員の皆様からお話しを伺いました。そのうち地域公共交通に関しては、市内7地区で各地区の運行協議会を運行主体とするコミュニティ交通が運行されていますが、その成り立ちは一様ではなく、早くから地域主体で始まった地区がある一方で、近年は行政からの働きかけを受けて運行協議会が立ち上げられた地区もあります。また、長く活動してきた運行協議会では、運営を担う方々の負担や後継者の確保が課題となっています。こうした事例から、交通手段そのものを確保するだけでなく、それを地域と行政がどのように支え、持続させていくのかまで考える視点が欠かせないと感じました。
翌日は、市役所でお話しを伺うだけでなく、青島地域周辺や宮崎駅周辺、中心市街地まで足を運び、観光やまちづくりの現場を視察しました。このうち青島では、かつて多くの観光客を集めた夏季の海水浴などを中心とした観光から、年間を通して人が訪れる地域へと転換を図る取組について説明を受け、その一つである「青島ビーチパーク」では、市の担当課が法規制などの調整を担う一方、運営やサービスでは民間の発想を生かすなど、官民がそれぞれの役割を担いながら取組を進めていることへの理解を深めました。

(青島ビーチパークでの現地視察)
さらに、中心市街地では、「宮崎オープンシティ推進協議会(MOC)」を訪問し、スタートアップや地元企業など多様な主体をつなぎ、交流や共創を通じて新たな事業を生み出す取組についてお話しを伺いました。実際の拠点を視察し、担当者の方から直接お話しを伺うことにより、行政と民間がそれぞれの強みを持ち寄りながら地域の課題に向き合う仕組みを、より具体的に理解することができました。

(宮崎オープンシティ推進協議会(MOC)でのヒアリング調査)
その後は宮崎駅周辺まで中心市街地を歩き、グリーンスローモビリティ「ぐるっぴー」にも乗車しました。「ぐるっぴー」は、宮崎駅周辺とデパートや飲食店などが並ぶ橘通り周辺との回遊性を高めるために運行されており、実際に乗車したことで、資料や地図だけでは捉えづらい施設の位置関係や、まちなかを移動する際の距離感を体感することができました。担当者から施策の背景を伺った上で現場を巡った経験は、政策を都市空間との関係から捉え直すきっかけにもなりました。

(グリーンスローモビリティ「ぐるっぴー」に乗車)
さらに、都市公園における民間資金を活用した整備・

(JMさかえまち公園(栄町街区公園)でのヒアリング調査)
最終日は、これまでの研究内容に応じて、午前中は2つのグループに分かれて、午後は全員で、福祉・介護、文化、観光、産業、医療、健康といった幅広い分野について、9つの担当課へのヒアリング調査を実施しました。それぞれの政策分野について、公開資料だけでは捉えにくい施策の背景や実際の運用上の課題に関しても説明を受け、「人口減少」という共通の課題であっても、その現れ方や対応方法は政策分野ごとに異なることが見えてきました。
また、滞在中には、宮崎市の職員の皆様と食事をともにしながら交流する機会にも恵まれました。ヒアリングとは異なる雰囲気の中で様々なお話しを伺い、交流もさらに深まりました。3日間を通して現地を歩き、そこで働く方々と直接言葉を交わせたことは、宮崎市への理解を深める上でも貴重な経験であったと感じています。
今回の2泊3日にわたる宮崎市での調査を通じて、他都市の取組と比較する際には、個々の施策だけを取り出すのではなく、その都市が担う機能や地域の成り立ち、施策を支える主体、そして実際に施策が展開される現場まで含めて捉えることの重要性を認識しました。一方で、宮崎市の各種の取組には、それぞれ宮崎市固有の背景も存在します。今後は、宮崎市と山形市の共通点と相違点を丁寧に整理した上で、今回得た知見を山形市でどのように生かせるのかを検討し、人口減少下でも持続可能なまちづくりにつながる政策提言を具体化していきたいと考えています。
最後になりましたが、3日間にわたり私たちを温かく迎え、ヒアリング調査や現地視察をはじめ、様々なかたちで調査にご協力くださった宮崎市役所の皆様に、心よりお礼申し上げます。