東北大学公共政策    

2019年度公共政策ワークショップⅠ最終報告会開催

去る12月19日、20日、今年度のワークショップⅠ最終報告会が開催されました。春から9ヶ月間取り組んできたプロジェクトの集大成となるイベントです。各チームとも、自分たちの政策提言について50分間報告した後、同級生、上級生、教員との一時間半におよぶ質疑応答を経て、外部からお招きした専門家のゲストに提言の妥当性について吟味していただきました。

12月19日

プロジェクトC「農林水産物輸出促進とインバウンド農泊による農山漁村振興策の研究」

農山漁村地域を振興するために海外市場の需要を活用したアプローチを探求したWSCは、農林水産物の輸出促進策として、経営改善を通じたASIAGAPの普及促進、フードバレー特区を活用した共同輸送の普及、また、インバウンド農泊の推進策として、農山漁村振興交付金への対象国・地域別支援メニューの追加、農泊地域実態調査や顧客満足度調査の実施を、さらに輸出と農泊の相乗効果を図るべくSAVOR JAPAN認定地域への輸出と関わりの深い生産地域の追加を、それぞれ提言しました。ゲストの東北農政局経営・事業支援部地域連携課の三塚善充様と同農村振興部農村計画課の高橋克行様から、政策現場の実情を踏まえた多くのコメントを頂戴しました。

プロジェクトD「SDGsの達成を目指した協働プロジェクトを企画する」

国連の行動目標SDGsを実現する実践プロジェクトを追求したWSDは、社会全体で適切な対話が生まれる土壌を作るファシリテーターの養成、フードバンク事業に対する寄付の促進や日本郵政との連携を通じた協働の推進、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や教育活動の一例としてSDGsの理解を深めるモデル演習授業の実施などを提言し、誰一人取り残されない包摂的な社会の実現に向けた道のりを示しました。それを踏まえ、ゲストの小沢晴司東北地方環境事務所長から、震災後の福島での除染活動や以前の国連人間環境会議でのご経験に基づく示唆深いお話がありました。

12月20日

プロジェクトA「人口減少社会における地方行政のあり方~秋田における今後の施策展開を考える~」

全国で最も厳しい人口減少と少子高齢化に直面している秋田県を対象に、社会減や自然減の双方についての人口対策を考察したWSAは、国の施策の分析や秋田でのヒアリング結果に基づいて、ICT ・IoTを用いた健康寿命対策、自家用有償旅客運送制度の拡大による地域住民の相乗り運送制度、産業振興と地域資源発掘のためのガバメントクラウドファンディングの活用、サテライトオフィス設置に係る財政的補助などを通じた企業版関係人口の拡大、などを多角的に提言しました。秋田県庁からコメンテーターをお招きし、秋田県における取り組みについて貴重なご教示を頂戴しました。

プロジェクトB「仙台市総合計画の制度的・実証的研究」

正確な現状認識と将来予測を踏まえて、時間と空間から、仙台市のグランドデザインを描き、批判的かつ建設的に政策提言を行うことを目指したWSBは、仙台市総合計画の実効性を確保することを重視して、区別計画策定委員会の設置、区別計画策定におけるシナリオプランニング手法の活用や区民討論型シナリオプランニング、小学校区の地域自治組織の設立、区長のリーダーシップを強化する区マネージャー制度の導入、地域活動相談窓口の設置などを提言しました。仙台市総合計画審議会の会長を務める奥村誠東北大学災害科学国際研究所教授から、審議会の議論を踏まえた鋭いコメントを頂きました。

 非常に緊張感のある雰囲気の中、どのグループも堂々かつ丁寧にプレゼンテーションとディスカッションをやり遂げました。9ヶ月間にわたって足で稼いだ調査の成果を報告した後の学生諸君は清々しい表情を見せてくれました。冬休みを挟んだのち、最終報告会での議論を反映させて、いよいよ最終報告書の完成に向けた詰めの作業が行われます。各チームの最終報告書は、本ウェブサイトにも公表される予定です。
 二日間の白熱した議論を終え、17時前にエクステンション教育研究棟を出ると、あたりはもう真っ暗になっていました。一年で最も日照時間の短い冬至の日がすぐ目前に迫っていたことに、ここでやっと気がついたのです。提言案と報告書案を無我夢中で取りまとめた12月は、どのチームも定時で作業を終えることなく、連日連夜、ワークショップ室に集って、プロジェクトに没頭していたからでしょう。最終報告会を乗り越えた高揚感と解放感に包まれながら、クリスマスを祝うイルミネーションの灯る街中へ、誰もが足取り軽く向かっていきました。



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